阿部氏は続けて次のように述べる。

国際的な学力調査「PISA」で明らかになった
日本の子どもたちの「弱点」とは

 経済協力開発機構(OECD)が2000年から国際的な学力調査PISA(生徒の学習到達度調査)を開始した。OECD加盟国を中心に、3年に一回、各国の15~16歳を対象に行われるもので、その結果は世界中の教育研究に大きな影響を与えている。実は、このPISAで重視されている学力と、日本国内の「全国学力・学習状況調査」には、深い関わりがある。

 2018年に行われた最新のPISAでは、日本の「読解力」が8位から15位に下がったことが話題になった。「読解力」問題の中には、大きく(1)「情報を取り出す」設問 (2)「理解する」設問 (3)「評価し、熟考する」設問があるが、日本の子どもが特に悪かったのが、(3)の「評価し、熟考する」ものだった。

 この「評価し、熟考する」ことを求める設問は、今回の全国学力・学習状況調査の中学校国語でも出題されたが、その正答率は上位県と全国平均で大きな差が出た。

 一例として中学校国語の問題を紹介しよう。以下の【3】-四の設問では、指定された複数の条件を満たした文章を書くことが求められる。そのうえで、自分自身の考えを表明することが求められている。

【紹介】に~~線部「様々に評価する」とありますが、【文章の一部】では、「吾輩」は「黒」をどのように評価し、どのような接し方をしていますか。また、あなたは、そのような「吾輩」の接し方をどう思いますか。(「全国学力・学習状況調査【調査問題】」2021年より引用)

「吾輩は猫である」の本文の該当箇所を引用し、「どのように評価」したかを説明することを求めた上で、「吾輩」の「黒」という猫への接し方を自分自身がどう評価するかを書く必要がある。

 この設問の全国平均正答率は、20.5%と他の設問に比べても圧倒的に低い。

 だが、そのような難問でも石川の正答率は31.0%(+10.5)、秋田27.2%(+6.7)、福井24.8%(+4.3)、東京24.7%(+4.2)と平均を上回っている。

 自分自身の考えを言語化する力は、PISAだけでなく、日本の学習指導要領で重視されている「見方・考え方」とも深くかかわる。

 これも普段の国語の授業のあり方や家庭学習の仕方の差が出た可能性が高い。作品や文章に書かれている考え方を、子ども自身が主体的に評価したり批判したりするような授業・学習が行われているかどうかの違いだろう。