支連会の歴史は、1989年5月に北京の天安門広場に政治の民主化を求めて座り込んだ学生や労働者支援から始まった。香港の社会活動家、政治家、文化人、教育者らが集まって設立され、その初代主席に就任した司徒華氏(故人)は文字通りの「香港民主の父」と呼ばれる人物である。

 同年6月4日未明に天安門広場に軍隊が突っ込み、いわゆる「天安門事件」が起こった後、支連会はその内外の人脈を使って中国全土の民主運動リーダーたちを海外に亡命させる計画を秘密裏に進めた。事件から1カ月後、広場で殺されたか、それとも逮捕されたとばかり思われていた学生リーダーたちが海外で声明を発表した時、事件に打ちひしがれていた人たちは励まされ、香港市民は支連会の存在を心から誇りに感じた。

 その後30年間にわたり、支連会は中国大陸の片隅にある香港で、毎年6月4日に事件の犠牲者追悼と中国共産党に対する責任追及を叫ぶ集会を開催してきた。時がたつにつれて参加者は増減したものの、それはそのまま、香港における中国政府に対する市民の評価指数とみなされた。新型コロナ感染拡大前の2019年の30周年集会には筆者も参加したが、これが最後の集会となった。

新型コロナ感染拡大前、2019年に行われた30周年集会のようす。これが最後の天安門事件の追悼集会となった Photo: Yoshiko Furumai新型コロナ感染拡大前、2019年に行われた30周年集会の様子。これが最後の天安門事件の追悼集会となった Photo by Yoshiko Furumai

 もちろんそれが最後になるとは、当時、誰も考えていなかった。だが、2019年の集会直後に始まった市民デモから引き起こされた政治的混乱から中国政府が強権を発動。2020年6月には国家安全法が制定され、民主派が次々逮捕される中、支連会幹部も拘束された。