尾原 時代の変化が説明しやすくなったと言われますね。

入山 実は今、僕はロート製薬の社外取締役をしています。ロート製薬は4本目の事業の柱として「食ビジネス」をやろうとしているんです。

 体に本当にいいものを作りたくて、石垣島で有機のパイナップルや豚を育てています。パイナップルをジュースなどに加工した時にできる搾りカスを豚のエサにして、豚のふんを堆肥に戻すという。

尾原 なるほど。通常は廃棄するものを使っているんですね。

入山 そうです。「完全循環型の農業」をやっています。

 石垣島の豚は、めちゃくちゃおいしいんですよ。阿佐谷に「成蔵(なりくら)」という日本で一番有名なトンカツ屋さんがあるんですが、そこで一時期使われていたぐらいです。

尾原 目利きの方が「ここがうまい!」と言うレベルのものを、環境にやさしく作っているわけですね。

入山 はい。ところが、なかなかまだそれが業績に十分につながらない部分もある(笑)。

尾原 ははは(笑)。

入山 これは日本中のいろいろなところで起きていることだと思いますが、ローカル系の食ビジネスでD2C(Direct-(2)to-Consumer、企業がユーザーに対して直接販売チャネルを持つこと)のビジネスモデルになってきた時に、プロセスを見せてストーリーで売らなきゃいけないはずなんです。“おいしい”だけだと十分ではないですよね。

 この前、石垣島に行ってきたんですよ。料理人のような方が出てきたので、「動画で循環型のすばらしいところを見せましょう」などと提案してきました。今は完成された料理の写真だけをアップしているようなので。

尾原 そうですね。アウトプットだけを出しても、たくさんある料理写真にまみれてしまいますしね。

 石垣島の文脈をわかって循環型の話に持っていって……というね。僕たちは物を味わっているだけじゃなくて、物語を味わっているわけですから。

入山 そうなんですよね。だから石垣島でも、『プロセスエコノミー』を読んだらと言っておきました(笑)。