世襲議員に、高学歴マスコミ…貧困層は貧困のまま
「ネイティブ強者」だけが目立ってよいのか

 世帯年収が高い家庭の子どもは高学歴に、逆に世帯年収が低い家庭の子どもは低学歴に。またその子どもも親の影響を受ける。この状況は、貧困再生産、さらには階層の固定化を生む。そして、機会の平等、が担保されない社会になる。

 親の与える環境、生育環境が子どもに影響を与えるケースとしてわかりやすいのは、政治家の世襲ではないか。与党・自由民主党の国会議員は、2021年10月8日現在、衆議院議員276名、参議院議員107名の計383名。そのうちの22%にあたる86人が世襲組である。

 私が問題視しているのは、言論や意思決定の場に関わる人のバックグラウンドに多様性が生まれないことだ。

 政治家だけではなくメディアもそうだろう。特に大手では高学歴の記者が多い。必然的に出身家庭の所得も高いということだ。

 断っておきたいが、学歴主義に完全に反対というわけではない。もちろん学歴偏重は多少是正されるべきだが、学問は普遍的な力を養うものであり、社会人としてはかられる指標の一つとして有効だと考えている。

 しかし、社会の声を拾い、動かしていく職業につく人たちに、「ネイティブ強者(筆者の造語)」が多いという現実には危機感がある。社会的弱者の声は拾われにくいし、当事者感が薄い人たちは、当然問題への切迫感も薄い。

「実家が太い」ことが社会生活をする中で大きなアドバンテージになる一方、低所得家庭は教育の機会を十分に受けられず、 さまざまな段階ではじき出されてしまう。
 
 社会にはあらゆる困難を抱え、明日の生活もわからないような生活をしている人がいる。私の生まれ自体、いわゆる社会の底辺層ないしはその近くだという自覚がある。その中で感じるのは、貧困層が大学に行くのには、いくつもの“見えない壁”が存在すということだ。