教育に投資できない環境の実態とは
大学に入ってからも続く格差

 そしてもう一つの壁は、「親や親族が教育に投資してくれるか」という問題だ。わかりやすいのが塾や通信教育だ。

 小学生になれば、みんなこぞって公文や子どもチャレンジを始める。中学にいけば塾に通い始め、中には家庭教師を付ける家庭も出てくる。うちはというと、何度泣きながら頼んでも、母親に悲しい顔をされ、ごねれば父親に怒鳴りつけられた。

 前述したように、貧困家庭の場合、家にエアコンがない、自分の部屋や勉強机がない、参考書などが買えない、といった問題もある。受験勉強をしたことがある人なら、いかに環境が大事か、は言うまでもない事実だろう。

 ネットやパソコンがない貧困家庭も多いのではないか。コロナ禍で自宅にいる時間が増え、これからオンライン化が進む中で、そういった子どもたちが心配でならない。 

 大学受験を経験するなかでも、家庭の所得によるハンディがある。例えば滑り止めで私立大学を受ける選択肢がないこと。受験料や交通費も払えないし、受かっても授業料が払えない。必然的に国公立大学の前後期の2回だけのチャンスになる。

 また、浪人という選択肢もなかった。生活費や模試の受験料が払えないからだ。

 大学に入ってからも、世帯収入による格差は続く。授業料は高騰している。昭和50年に国立大学で平均年額3万6000円、私立大学で18万2677円だったのに対し、平成16年では国立52万800円、私立で81万7952円と膨れ上がっている。

 授業料免除制度が利用できる場合もあるが、入学時に納める入学金と前期の授業料は適用外だ。引っ越し費用、教材やPC、毎日着る衣類など、入学時の出費はかなりのものだ。半期ごとに教科書は変わり、1冊4000円以上するものある。家賃や生活費も工面しなければならない。
 
 また、親からの援助が受けられない学生も少なからずいる上に、親に奨学金を使い込まれたり、バイト代を実家に仕送りする学生もいる。