三井住友フィナンシャルグループ(FG)が米証券準大手と戦略的資本・業務提携を締結した。米国での金融事業は他メガバンクが先行するが、三井住友FGが今になって米国開拓に乗り出すのはなぜか。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
三井住友FGが満を持して米国強化
“パートナー”は米証券準大手ジェフリーズ
「安易に案件に飛び付いているわけでは断じてない」。三井住友フィナンシャルグループ(FG)でM&A(企業の合併・買収)を取り仕切る事業開発部の吉村昌浩部長は、「勘違いされたら心外だ」とばかりにそう念押しする。
だが、そんなふうに邪推する金融関係者がいたとしても不思議はないだろう。三井住友FGは今、海外事業の拡大を巡って怒濤の決断を下しているからだ。
4月28日にベトナムのノンバンク最大手へ最大1500億円での出資を決めてからというもの、その後わずか2カ月強でフィリピンの銀行大手へ約100億円、インドのノンバンク大手へ約2200億円を投じると畳み掛けるように発表。7月14日には、米証券準大手のジェフリーズ・ファイナンシャル・グループとの戦略的資本・業務提携まで決定した。
吉村部長が断言するように、三井住友FGがここに来て海外案件を次々とのみ込んでいるのは、やぶから棒の判断ではない。2019年の太田純氏の社長就任を一つのきっかけに、海外マーケットの拡大に本腰を入れ直しているのだ。
国際規制対応により十分に積み上がった資本を成長投資に振り向けるべきフェーズに移行したこともあって、投資案件の洗い出しは徹底的に行われている。それこそ、売りに出されていない案件も含めてだ。昨年4月には成長投資をより戦略的に行うべく、国際部門や経営企画部などに散らばっていた三井住友銀行のM&A関連部隊も事業開発部に集約した。
そしてコロナ禍の中、ライバルたちの海外M&Aの動きが鈍ったタイミングで、三井住友FGは逆にアクセルを踏み込んだ。これが今期に入って立て続けに投資が決まった一因となっている。ベトナムのノンバンクへの出資にしても、吉村部長が現地に飛び、熱意を見せたのが合意に一役買った。
ただし、アジアの金融機関への出資は大きな成長と高い収益性を見込めるとあって分かりやすいが、三井住友FGはなぜ、ジェフリーズとの提携にまで動いたのか。
米国での金融事業といえば、リーマンショックを機に米金融大手のモルガン・スタンレーに90億ドルを出資した三菱UFJフィナンシャル・グループや、英金融大手のロイヤル・バンク・オブ・スコットランドから北米の企業向け貸出債権を約30億ドルで買い取ったみずほフィナンシャルグループが先行する。
三井住友FGが、“今更”米国開拓に本気になった理由とは何か。