配偶者居住権の消滅事由は
リスクにもなれば、メリットにもなる

 配偶者居住権の存続期間を定めなかった場合、その配偶者の死亡時まで権利は続く。運悪く地震などの被害に遭って家屋が全壊してしまい、居住建物が使用できなくなった場合にも、残念ながら、配偶者居住権は消滅する。

 では、逆に、配偶者が配偶者居住権を手放したいと思ったら、どうだろう?やがて、配偶者も年老いて老人ホームへ入居、あるいは親族に引き取られて他家へ同居する場合もあるだろう。しかし、配偶者居住権は配偶者に帰属する固有の権利であるため、配偶者本人以外に売却できない。施設入居や入院費用に充てることは不可能だ。

 ただし、配偶者居住権を自ら消滅させるのは可能である。例えば、配偶者居住権を取得した配偶者が居住建物や敷地を単独で所有する方法だ。つまり、Aさんのケースなら、後妻が前妻の息子から自宅を買い取ることである。有償での不動産売買なので、前妻の息子には譲渡所得税が発生する。

 配偶者居住権を放棄することもできる。存続期間中の途中放棄も可能だ。前妻の息子との合意により、配偶者居住権を解除することもできる。放棄や合意解除の場合、無償であれば、前妻の息子には贈与税が発生する。

 また、Aさんのケースでは考えにくいが、前妻の息子から居住建物や敷地を譲渡された場合にも、配偶者居住権は消滅する。一方、配偶者に何らかの違反があれば、所有者から是正催告ができる。是正されない場合、所有者が配偶者居住権の消滅請求できるので、注意が必要だ。

 配偶者居住権の消滅はさまざまなケースがあり、課税対象となる税目や課税対象者も異なる。実行する前に、専門家へ相談されることをお勧めする。