大学院生のアンジェラ・オウさん(23)は幼い頃から、台湾で地震が起きたらテーブルの下に隠れ、給水源の近くにとどまることを学んできた。だが、中国の攻撃に対する備えについてはほとんど知らない。オウさんは「そもそもどこに隠れるのか」と問いかけ、「私には分からない」と話す。2300万人の台湾市民にとっては長年、中国との武力衝突の可能性よりも、自然災害の方がはるかに高い関心事だった。ところが足元では、中国の攻撃に対する懸念が市民の間で確実に広がっており、有事への備えが十分ではないとして危惧する声も出ている。10月に入って以降、中国人民解放軍(PLA)は戦闘機や爆撃機を含む軍用機およそ150機を台湾の防空識別圏(ADIZ)に送り込んだ。中国による威嚇行為としては過去最大で、台湾は空軍機を緊急発進(スクランブル)させて対応せざるを得ず、西側諸国の間でも警戒が強まった。