宮本武蔵『五輪書』に学ぶ、不透明な時代を「勝ち抜く」極意Photo:PIXTA

剣豪・宮本武蔵が剣術の極意や武士としての思想をつづった『五輪書』は、先行き不透明な現代で“戦う”経営者にとって重要な示唆を与えてくれます。今回は、『五輪書』から学ぶことができる、経営者が厳しい時代を「勝ち抜くコツ」について考察していきたいと思います。(ネットストラテジー代表取締役 平野敦士カール)

「成功する経営者」は
何が違うのか

 成功している経営者は、よく「運が良かったから」と言います。運は人間がコントロールできないものであり、時代の流れや風向きともいえます。この経営者の発言には多少謙遜も含まれるでしょうが、確かに時代の流れをうまく捉えて、急成長している企業は多くあります。

 では、この先行きが不透明な現代で、どのようにしたら時代の流れや風向きを的確に捉えることができるのでしょうか。

 実は私の愛読書でもある宮本武蔵の『五輪書』に、そのヒントが書かれていると解釈しています。そこで本稿では、宮本武蔵の著書の中で見つけた、経営戦略に役立つヒントをお伝えしていきます。なお、武蔵の著書には諸説あることは理解していますが、私は歴史家ではないので、本稿ではあくまで武蔵の著書を読む中での私なりの解釈を述べさせていただければと思います。

 宮本武蔵については、岸田文雄首相の愛読書でもある吉川英治氏の小説『宮本武蔵』や井上雄彦氏による漫画『バガボンド』で知っている人も多いと思います。宮本武蔵は、戦国時代末期の1584年に生まれ、江戸時代初期の1645年に没したといわれています。諸説ありますが、世界的ベストセラーとなった『五輪書』の他、『獨行道』『兵法三十五箇条』という著作を残しており、生涯で六十余人と対戦して一度も負けなかったとされている剣豪です。

 武蔵の著作の中でも、『五輪書』は特に多くの人に知られています。『五輪書』には、会得した剣術のほか、武士としての心構えなどが包括的にまとめられており、武蔵の集大成ともいえる著作です。

 さて、冒頭で述べた通り、兵法の極意をまとめた『五輪書』には、ビジネスパーソンとしても学ぶべき点が多くあります。実際に例を挙げながら、見ていきましょう。