気候変動リスクの情報開示、企業悩ます複雑さPhoto:SOPA Images/gettyimages

 カナダのモントリオール銀行(BMO)は2019年、気候変動が自らの事業に及ぼす影響について考察し始めた際、外部に助けを求めた。同行は気候マッピング企業と協力し、サードパーティーのソフトウエアを用いて、さまざまなシナリオのもとでポートフォリオがどうなるかを調査し、カナダの大学研究者と共に気候リスクの研究プロジェクトに取り組んだ。

 現在では、行内に気候専門家を採用し、今年に入り独自の気候研究所を設立するほど、このテーマに関する専門知識を深めている。ここに来て、得られた知識をいかに活用して情報を伝え、顧客を引きつけるかを検討中だ。

 BMOの最高サステナビリティ責任者(CSO)であるマイケル・トーランス氏は、「銀行がこのような形で気候の専門知識を持つようになるとは、10年前には想像もできなかった」と語る。「われわれは『こうした能力を手に入れたのだから、それを加速させ、差別化につなげることができる』と考えた」という。

 投資家からはさらなる情報提供の要求が強まり、米証券取引委員会(SEC)をはじめとする規制当局が情報開示の義務付けの是非を検討する中、企業は温暖化がもたらす新たなリスクを理解して伝えることに注力している。

 気候関連の財務報告に標準的な枠組みを提供することを目的とした「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」によると、ガイドラインの準拠が年々広がっているが、多くの企業の対応スピードが不十分だ。TCFDは先進7カ国(G7)が後援し、実業家のマイケル・ブルームバーグ氏が議長を務めている。