どんな時代でも大切なのは
自分自身で困難に打ち勝つ力を身につけること

 たとえばハルキくんのケースは、よく言われる「将来なりたいものから逆算して進路を決める」やり方とは異なる。

 好きなことを極めるなかで、いわゆる“職業図鑑”に載っていない職業を自らつくり出し、ビジネスを始めている。ハルキくんは、「今が楽しい」という。

 子どもにビジネスをさせたり、YouTubeへ投稿させたりするのは危ない、と感じる保護者もいるだろう。もちろん、英恵さん自身も、初めから柔軟に受け止められていたわけではない。

 実はハルキくんは、3歳の時に、不動性弱視(ふどうせいじゃくし)と診断された。右目が見えていなかったのだ。医師から受けたのは、「生涯にわたって勉学は難しい」という宣告。英恵さんは当時、ひどく動揺したという。

親の「将来何になりたい?」という質問が、子どもの可能性を狭めるワケハルキくんの右目は、奇跡的に読書ができるようになるまでに回復した

 それでもあきらめず、英恵さんとハルキくんは、トレーニングに励んだ。ハルキくんの左目をアイパッチで隠し、あえて盲目の状態をつくるのだ。これを、1日14時間。不安で泣き叫ぶハルキくんに、英恵さんは心を鬼にした。

 公園では「変なメガネをかけてる子は入れてあげない」と、仲間はずれにされることも多かった。そのたびに、親子で泣いたという。

「この子はきっと、この先もずっといじめられる」

 でも、母親の自分がいつまでも守ってあげられるわけじゃない。英恵さんはそう思い、「ハルキに“自分自身で困難に打ち勝つ力”をつけさせること」を最優先に、これまで子育てをしてきた。

 特に、ハルキくんはイラストやゲーム好きだったこともあり、これからのAI社会に向けて、デジタルツールには積極的に触れさせてきたという。YouTubeへの投稿を応援したのも、その一貫だ。