日本といえば「パクリ」、松下電器も “マネシタ電器”

「経営の神様」と言われる松下幸之助氏は今から半世紀ほど前、このようなことを言っている。

「日本人は決して単なる模倣民族ではないと思う。吸収消化する民族である」(PHP1965年7月号)

 なぜこんな言い訳がましいことを言っているのかというと当時、日本のあらゆる産業・業界で「パクリ」が横行していたからだ。

 自動車も家電も海外メーカーのものを忠実に模倣した。年配の方ならばご記憶にあると思うが、松下電器も “マネシタ電器”なんて馬鹿にされた。今、我々は中国や韓国の偽ブランド品やパクリ商品を見て、「いやあ、民度が低いですなあ」とあきれているが、当時はそれと全く同じように、欧米からあきれられていたのだ。

「そんな昔のことを蒸し返すな!当時はパクリもやったかもしれないが、今や日本は世界の誰も真似できない、独自の技術、独自の文化を生み出しているだろ!」というお叱りが飛んできそうだが、エンタメ作品で言えば、それはかなり傲慢な考え方だ。

 映画、ドラマ、漫画、小説などの作品というのは、他の作品から様々な影響を受ける中で出来上がっている。「模倣が文化をつくる」という側面があるのだ。

スティーヴン・キング作品に根源がある?

 例えば、「イカゲーム」のパクリ先のひとつだと一部で言われる「ハンガー・ゲーム」も公開された2012年当時、「日本のバトル・ロワイアルのパクリでしょ」という指摘が多く寄せられた。「ハリウッドよ、お前もか」とあきれる人も多いだろうが、実はパクられた側という「バトル・ロワイアル」も、ある作品を「模倣」している。

 それは、1979年にアメリカで出版された、スティーヴン・キングによる小説「死のロングウォーク」だ。

 近未来のアメリカで、14歳から16歳までの少年100人が参加する「ロングウォーク」という競技がある。ただひたすら延々と歩くだけだが、3回制限速度を下回ると射殺される。99人が死んで最後の1人になったら優勝、どんな高額な商品でももらえる――というストーリーで、1999年に小説「バトル・ロワイアル」が発表された際、作者の方がこの作品に影響を受けたことを認めている。

 確かに、次々と少年たちが死んでいくという点では、「バトル・ロワイアル」にも似ている。もっと言えば、456人が参加して最後の1人が生き残るまで続けられる「イカゲーム」にも通じる部分がある。つまり、「デスゲーム」を扱うエンタメ作品は日本発祥でもなんでもなく、40年前から世界各国で存在しているのだ。