模倣の連鎖で生まれる「名作」、スターウォーズも

 これはエンタメの世界では決して珍しい話ではない。

 実は日本が世界に誇るキャラクター「ゴジラ」もそうだ。ハリウッドでもリメイクされているし、中国や韓国でもパクった怪獣作品なども制作されていることから、「おいおい、みんな日本をパクるなよ」とドヤ顔になっている日本人も多いだろうが、実はこの作品も完全な日本オリジナル作品かというと、そうとは言い難い。

 それは、1953年にアメリカで公開されたモノクロ特撮怪獣映画「原子怪獣現わる」だ。映画史上初めて、核実験によって古代の恐竜が蘇って、都市を攻撃するという設定で、翌54年の「ゴジラ」のストーリーとまったく同じなのだ。

 くどいようだが、これをもってして「パクリだ」などと言いたいわけではない。そもそも、この「原子怪獣現わる」以前にも、怪獣映画は存在しているので、この作品自体が何か別の作品から着想を得たものかもしれない。

 エンターテインメントの世界では、優れた作品、エポックメイキング的な作品が登場すると、どうしても世界のクリエイターはモロにその影響を受けてしまう。「よしっ、完コピするくらいパクってやるぞ」なんて思っていないのに、気がついたらどこかその作品に雰囲気やストーリー、キャラクターを無意識に寄せてしまうのだ。引きずられる、という表現の方が正確かもしれない。

 そうして引きずられた作品は、また別のクリエイターに影響を与える。誰かがパクった作品が、また別の誰かにパクられる。そういう模倣を繰り返されるうちに、もはやどれが本家で、どれがパクリなのかもわからなくなっていく。

 わかりやすいのが、「スターウォーズ」だ。言わずと知れた世界的に大ヒットしたSF映画の金字塔だが、この作品が、黒澤明監督の作品に影響を受けていることは有名だ。

 登場人物たちがライトセイバーという刀で戦うのは、「七人の侍」などの影響で、「ジェダイ」という言葉も「時代劇」からきているという説もあるほどだ。

 また、登場するロボット2体、C3POとR2D2は、「隠し砦の三悪人」に登場する農民コンビをモデルにしており、レイア姫もこの作品に登場する「雪姫」からきているという。

 こう見ると、「スターウォーズ」は、日本映画に間違いなく引きずられているわけだが、しばらくして逆に日本映画が引きずられる。

 この「スターウォーズ」の大ヒットを受けて、日本でもSF映画ブームが到来した。そこで、東映が深作欣二監督、真田広之さん、千葉真一さんというスターを起用して、10億円という当時にしては破格の制作費をかけ、世界に通用する大作をつくった。

 それが1978年に公開された「宇宙からのメッセージ」だ。

 実はこの作品、興業的には成功して、全米をはじめ海外でもかなりヒットした。が、映画批評家や「スターウォーズ」のファンからボロカスに叩かれた。

 実際、この作品を観たことがある人ならばわかると思うが、「スターウォーズ」のチューバッカやR2D2、レイア姫と微妙にかぶるキャラクターが続々と登場している。要するに「スターウォーズの粗悪な模倣作品」だと思われてしまったのだ。

 日本映画から着想を得たアメリカのSF映画を、日本のSF映画が模倣をして「パクリ」と叩かれる。こうなってくると、なんだかよくわからないが、多くの人に愛される「名作」というのは往々にして、このように「模倣の連鎖」の中で生まれているのだ。

 それがまさしく、「イカゲーム」だ。