「守破離」のサイクルで、韓流作品がうまく廻り出した

 ここまで多くの人が指摘しているのだから、「イカゲーム」も「カイジ」を模倣している部分があるのは事実だろう。他にも名前の挙がっている作品から影響を受けている可能性もゼロではない。

 しかし、「カイジ」をはじめ、それらの作品も同じことが言える。先ほども言ったように、「デスゲーム」というジャンルはかなり以前から存在しているし、カジノやギャンブルをテーマにしたエンタメなど世界中にある。漫画原作者も映画製作者も、これまで生きてきてそのようなさまざまな作品を見てきた。中には、創作に大きな影響を与えているものもあるはずだ。そういうものに引きずられながら、吸収して自分の作品を作っている。

 これは、武道や茶道の世界で言われる「守破離」というものだ。

 諸説があるが「守」とは師に忠実に学び、倣い、励む。そして「破」は、その師からの教えを吸収消化したうえで、自分のやり方をみつけること。そして、「離」によって、自分らしさを開花させる。

「イカゲーム」など韓国ドラマが世界でヒットするのは、「守破離」というサイクルがうまく回っているからではないか、という気がしている。

 国をあげてエンタメ輸出に力を入れる韓国も当初は「守」から始まった。90年代まで軍事政権でエンタメ産業が発展していなかったので、日本やアメリカのエンタメを徹底的に学び、模倣したところから始めたのだ。ジャニーズファンが、K-POPを日本のアイドルのパクリだと主張するのは、このような歴史的事実があるからだ。

 しかし、韓国はそれで終わらず「破」として、韓流を生み出して、続く「離」で「イカゲーム」やBTSなど完全に韓国らしいエンタメを作り出し、世界で売っている。

 これは日本も素直に学ぶべきところだが、「韓国はどうせ日本のパクリ」というプライドが邪魔をしてなかなか「守破離」というサイクルが進まない。

「パクリの韓国ドラマなんて見ません!」と気位が高いのはいいが、相手を引きずりおろしているだけでは、いつまでも自分たちは成長できない。まずは「守」として、日本より優れている部分を素直に認め、真摯に学ぶことから始めるべきだ。

 これまで我々は色々な国から「日本に学べ」「ルック、イースト」なんて煽てられてきたせいか、他国から学ぶようなことなどない、という思い込みがある。特に中国と韓国に教えを請うなど、あり得ないという妙なプライドがあるのだ。

 日本のエンタメ作品が世界に通用するようになるには、まずは韓国をパクるところから始めるべきなのかもしれない。