目指すべきは“あらゆる人が働きやすい社会”の構築
「男性育休」の現状と育休取得率のアップに向けた企業の施策を久我さんにうかがってきたが、一方で、子どもを持たない社員からは「なぜ、子育て中の人ばかりが優遇されるのか?」という不公平感も出てきかねないだろう。
久我 たとえば、弊社には、「ファミリーサポート休暇」というものがあります。身内であれば、「サポート」の対象を限定せず、親・子ども・兄弟など、誰の世話であってもフレキシブルに使える休暇制度です。それとは別に「看護休暇」というものもあります。これは年間で10日間取得でき、「有給休暇」扱いになっています。このように、用途を限定せずに誰もが幅広く使える休暇制度があると社員の誰もが助かりますし、「子どもを持つ世帯だけが優遇される」という不公平感もなくなりますね。
今後、少子高齢化によって、生産年齢人口とともに労働力人口が減少していくことを考えれば、すべての企業にとって、育児と仕事の両立を望む人だけではなく、あらゆる立場の人が働きやすい環境をつくっていくことが重要となる。
久我 最近は「週休3日制」を導入する企業や、時間や場所にとらわれない「テレワーク」を就労形態の基本にする企業も増えてきました。誰もが自分のライフスタイルに合う働き方を選択でき、そのなかで子育てをすることができるようになれば、育休制度はさほど重要ではなくなるかもしれません。もともとテレワークは働き方改革の一環として進められてきたものですが、コロナ禍によって一気に普及したことで潮目が変わりました。会社のデスクに長い時間張りついていることを良しとしてきた価値観が崩れ、成果主義へと舵を切っていく企業もあり、多様な人材の活躍できる社会が近づいてきたのではないか、と私は見ています。