会談実現の背景にある
両国首脳の思惑

 今回の会談を持ちかけたのは、ホワイトハウスである。

 バイデン政権の支持率は、アフガニスタンからの駐留米軍の撤退や新型コロナウイルスの流行再拡大によって下落が続いている。そのうえ、政権の行方を占うと言われたバージニア州の知事選挙で民主党候補が共和党候補に敗れ、厳しい状況に立たされている。

 加えて、バイデン政権の支持率は、ちょうど韓国の政権が日本たたきをすれば支持率が回復するように、対中姿勢に左右されるため、バイデン氏としても来年秋の中間選挙をにらんで、中国の行動がエスカレートしないよう、くぎを刺しておく必要性に迫られたのである。

 バイデン政権の対中政策には、三つの「C」が存在する。技術開発などでの競争(Competition)、気候変動問題などでの協力(Cooperation)、そして人権や台湾問題をめぐる対決(Confrontation)だ。

 バイデン氏は、これらのうち、対決の部分が突出してしまえば、偶発的な衝突が起こりかねないとして、習氏との会談の中で、一定の歯止め(ガードレール)を見いだそうとしたのである。その意味からすれば、両首脳が意思疎通を維持していくことで合意できたことは、唯一、成果だったと言えるかもしれない。

 一方、習氏も、長期政権を確固たるものにするため、「共同富裕」(格差是正)を打ち出し、不動産業界や芸能界などもうかっている企業や派手な活動をしている企業を狙い撃ちして、広く人民の支持を得ようと躍起になっている途上にある。

 当然、新疆ウイグル自治区や台湾には触手を伸ばしたいところだが、自らの威信をかけた来年2月の北京冬季オリンピックに、アメリカなどが人権問題を理由に政府関係者を出席させない「外交ボイコット」を検討していることに敏感になっている最中でもある。

 つまり、ホワイトハウスからの呼びかけは、習氏にとっても、「このあたりでアメリカと対等に話ができるリーダー像を見せておこう」「アメリカと少し関係を良くしておこう」とする思惑に見事にマッチしたのである。