米中首脳会談は
世紀の覇権闘争への号砲

 とはいえ、台湾や人権問題をめぐっては主張がことごとく対立した。

 バイデン氏が「アメリカは、自分たちの利益と価値、同盟・友好国のために立ち上がる」と述べたのに対し、習氏は「人権問題を利用した内政干渉には賛成しない」と反論した。

 また、習氏が中国共産党総書記就任以来、一貫して「核心的利益」と位置づけてきた台湾統一については、アメリカが統一への動きを口実に中国の抑え込みを図っていると批判し、「火遊びだ」と述べてけん制した。

 お互いの主張が真っ向からぶつかりあったこの会談を、筆者は、米中2大国による「今世紀最大の覇権闘争の幕開け」と位置づけたいと思っている。

 アメリカ政府要人による中国批判は、2018年10月4日、トランプ政権の副大統領だったマイク・ペンス氏が、保守系シンクタンク「ハドソン研究所」で行った講演で、人権問題や台湾統一への動きを「不当な行為だ」と声高にののしったことが記憶に新しい。

 当時、ニューヨークタイムズは、これを「新冷戦の号砲」という見出しで伝えたが、今回はトップ同士の会談である。

 それが平行線に終わったこと、もっと言えば、「米中両国が人権問題や台湾問題で折り合う可能性はない」と国際社会に印象づけたことは、極めて深刻ととらえるべきだろう。

 今後、アメリカが近く開催予定の「民主主義サミット」に台湾を招待するような動きに出れば、それがすぐさま有事へと発展することはなくても、両国の関係は、ガードレールどころか街灯すらない暗い夜道を、手探りで歩むような状態になるのではないだろうか。

日本で高まる
中国への脅威

 こうした中、筆者は、東京・有楽町で、東京近郊の大学ゼミの協力で「世界で最も脅威に感じる国はどこですか?」というアンケートを実施した。今年7月にも調査しており、前回と今回の結果は次の通りだ。

◆「最も脅威を感じる国」調査(2021年7月と11月実施 n=50)
7月1日調査 中国24人 北朝鮮12人 ロシア・アメリカ5人 韓国・インド2人
11月4日調査 中国31人 北朝鮮13人 アメリカ4人 ロシア2人

 サンプル数は50と少ないが、今年7月に比べ11月の調査のほうが、中国を「最も脅威」と感じる人の割合が増加している。