発症から5日以内に、1日2回、5日間服用する。臨床試験(オミクロン株発生前)では、重症化リスクを約30%低下させる効果が報告された。

 英国では承認済みで、日本政府も年内の実用化を目指し、それを前提に160万回分の供給を受けることで同社と合意している。感染判明後も入院せず自宅などで待機・療養する人にとって、心強い味方となるだろう。

 気になるオミクロン株への効果だが、同社幹部のダリア・ハズダ氏は11月30日、モルヌピラビルはどんな変異株に対しても十分有効(同様の活性を持つ)との見方を示した(ロイター)。オミクロン株に特化して言及したわけではないが、作用の仕組みを考えれば、変異に強いことは想像がつく。

 つまり、オミクロン株で変異が多発しているのはウイルス侵入のとっかかりとなるスパイクタンパクだが、いったん入ってきてしまったウイルスに作用する薬なら、効果に深刻な影響はないだろうというわけだ。

ファイザー開発中の飲み薬は89%の効果
「細胞内で増殖を防ぐ」薬は変異にも有利か

 新型コロナ経口薬としては、ファイザーが開発中の「パクスロビド」にも注目が集まっている。モルヌピラビル同様、「侵入したウイルスが増殖するのを妨げる」仕組みの薬だ。米国内では緊急使用許可の申請中で、間もなく実用化されるだろう。

 パクスロビドは、発症直後に1日2回、1回3錠を重症化リスクの高い人が服用し、重症化を防ぐ。成分に、既存の抗ウイルス薬(HIV治療薬)「リトナビル」を含み、酵素の活性を妨げてウイルスが体内で増殖する能力を低下させる。

 臨床試験は、肥満や高齢など重症化リスクを一つ以上抱える軽症・中等症の新型コロナ患者1219人に対して実施され、入院や死亡のリスクを低下させる効果は約89%にも上った。

 具体的には、発症から3日以内に投与を開始した患者では、そこから28日以内の入院は0.8%に抑えられ、死者はなかった。プラセボ(偽薬)を投与された患者たちでは7%が入院、7人が死亡した。

 ファイザーCEOのアルバート・ブーラ氏は11月29日、米CNBCの報道番組に出演し、パクスロビドは「変異ウイルスの影響を受けない自信がある」と強調した。まず8000万回分を生産する見通しだという。

 このほか、塩野義製薬が開発している経口薬も、すでに国内で中等症・重症患者に使われている点滴薬「レムデシビル」も、細かくは違うが、ざっくり言えばこの二つと同じ、「侵入後に増殖を防ぐ」薬である。一定の効果は期待して良さそうだ。