重症化予防薬は「服用までの時間」が勝負
経口薬なら受診から全てをオンラインで

 パクスロビドやモルヌピラビルの課題は、服用までの時間だ。いずれも「発症から5日以内」というのは、かなりせわしない。重症化を防ぐのだから、当然と言えば当然である。

 ウイルスは細胞内で数百倍にも増幅してから細胞外へ一気に放出され、また周辺の細胞に取り付いて感染を繰り返していく。1日どころか数時間の遅れが、急速な症状悪化につながることもある。

 医療機関を受診して検査を受けねばならないなら、感染の急増時には検査待ちが長くなり、検査の結果待ちでも大幅に時間を取られる可能性がある。さらに薬の流通状況によっては、入手までにも想定以上の時間がかかりかねない。

 報道によれば、薬の受け取りについて厚労省は、薬局から自宅への配送を検討しているという。経口薬のメリットの一つだ。受診した医療機関から薬局へ処方箋がファックスなどで送られ、薬剤師が患者に電話やオンラインで指導した後、配送業社に手配される。

 だがそれも、スムーズにいくかは供給量次第だ。

 また、そもそも発症しているのだから、患者本人も受診のために医療機関を訪れること自体がきついし、移動中に感染を広げる恐れもある。医療機関を直接受診して検査を受けることを前提にせず、積極的にオンライン診療を導入していくべきだろう。

中等症・重症の場合には「免疫を抑える」
アレルギーやリウマチの薬が有効なワケ

 もう一つ、オミクロン株の変異の影響が少ない治療薬のタイプに、増殖したウイルスへの「過剰な免疫反応を抑える」薬がある。

 国内で以前からアトピーなどのアレルギー治療に使われてきたステロイド系抗炎症薬「デキサメタゾン」や、免疫抑制作用のある抗リウマチ薬「バリシチニブ」がそれだ。酸素吸入やまたは人工呼吸器が必要な中等症・重症の新型コロナ治療薬として、早々に認められた。

 感染症なのに免疫の働きを抑えてしまうというのは理解し難いかもしれない。だが、新型コロナでは、ウイルス侵入に対し自分の免疫が急激に過剰に働いて劇症化する「サイトカインストーム」が深刻だ。

 ワクチン未接種の場合、感染者全体の約2割が重症肺炎となり、うち3割は命に関わる急性呼吸促迫症候群に至る(COVID-19有識者会議)。特に若い人は、サイトカインストームがその大きな原因となっている。

 デキサメタゾンやバリシチニブは、ウイルスではなく自分の免疫システムに働きかけ、反応を弱める。オミクロン株のように変異が多くても、それとは無関係に薬効を示し、サイトカインストームを抑制できるはずだ。