【ワシントン】米証券取引委員会(SEC)は15日、MMF(マネー・マーケット・ファンド)の強靭性強化や企業幹部の自社株取引制限などを目指す4つの提案を発表した。
今回の動きから、SECのゲーリー・ゲンスラー委員長が、SECとしては過去数十年で最も野心的との声もある政策目標の法制化を加速させていることがうかがえる。ジョー・バイデン米大統領の指名が遅れ主要ポストが空席のままの他の金融規制当局とは対照的だ。
民主党は気候変動対策や大企業の力の抑制といった進歩的な優先目標を前進させる上でゲンスラー氏を頼りにしている。資産運用会社や公開企業、株式市場に関する規則を策定するSECの権限は、回り道になることも時折あるが、そうした目標を達成する強力な手段となっている。
ゲンスラー氏の政策目標は政治的な対立を映すものだ。5人のSEC委員による採決では、4つの提案のうち3つが民主・共和両党の方針通りの結果となった。4案のうち2つは、動揺した投資家がMMFから資金を引き揚げがちになる状況の抑制や、「スワップ」として知られる不透明なデリバティブ(金融派生商品)の規制を通じて、金融システムの安定性向上を目指すものだ。残りの2つは株式市場の公平性と透明性の向上を目指す規則案で、企業幹部の株式取引に対する新たな制限を導入するほか、公開企業の自社株買いに関する開示要件を引き上げる内容となっている。
MMFに関する新規則は、2008年と2020年の過去2回のリセッション(景気後退)時に起きた出来事の防止が念頭にある。米連邦準備制度理事会(FRB)は当時、MMFに対する解約請求が相次ぎ信用市場が収縮したことで、MMFへの支援を余儀なくされた。