3つの希望を叶えた場合
80歳以降の家計はどうなる?

 最後に、簡単に80歳以降も試算しておきます。80歳以降は、不動産収入、奥様の勤労収入が無くなるため、収入は公的年金のみ。つまり、ご夫婦の収入は350万円です。

 80歳以降になると生活の変化に応じて支出額も変わるでしょう。まず、税金・社会保険料の支払いと、住宅ローンの支払いが無くなります。収入が公的年金のみに減少するため、税金・社会保険料の支払額も減少します。ここでは年間で160万円としましょう。この160万円と住宅ローンの支払額(年間168万円)を合計した合計328万円分の支出が浮きます。

 さらに、娯楽費などが減ります。娯楽費等を月23万円から月5万円まで減ると仮定すれば、月18万円、年間で216万円支出額が減るでしょう。70〜79歳時点の年間支出は911万円でした。そのため911万円−328万円−216万円=支出は367万円です。差し引き39万円の赤字です。

 さらに、おそらく食費等も減るでしょう。つまり、毎月の支出は年間の公的年金収入の350万円とちょうどトントンくらいになる考えられます。80歳以降はほとんど金融資産に手をつけずに生活することができるか、多めに使った場合でも数十万円の取り崩しで済むということです。

 したがって、Xさんは今まで目標にしていた「60歳で早期退職して20年間楽しむ生活」を送り、人生100年時代を視野に入れても経済的に心配する必要はないでしょう。むしろ、晩年は早めに相続対策を行う必要があります。

 簡単な試算ですが経済的に不安はないのですから、Xさんの計画を実行してください。

 他の人と異なる老後を過ごすことになりますが、誰にも迷惑をかけることはありません。人は人、自分は自分と考えて、後ろめたさや後悔することなどは一切考えずに、60歳での早期退職を目指して準備しましょう。今から娯楽費等を増やしても大丈夫です。

 また、余裕があるのですから、79歳まで支払う予定の住宅ローンは繰り上げ返済をして完済するのもよいでしょう。そうすれば60歳以降、金融資産からの取り崩しが減るので、精神的な負担はさらに軽くなるでしょう。

 ぜひ、計画を実行し、人生をエンジョイしてください。 

(ファイナンシャルプランナー 深野康彦)