働きやすさと働きがいのある「あんしんカンパニー」
豊岡市には“女性活躍”で飛躍的に進化した企業が何社かあるが、そのひとつがカバン製造業者・株式会社由利だ。まず、人手不足を解消するために採用したのが“かなり短い時間”での勤務形態で、これを、豊岡市は「超短時間少日数勤務」と名付けた。専業主婦層などの潜在労働力を掘り起こすために考案された勤務スタイルで、企業側がシフトや業務内容を見直すことによって、さまざまな生活事情を抱える人が短時間の就労で活躍できるものである。
小安 由利さんは、カバンの製造過程のうち、専門の職人さんでなくてもできる仕事を細分化することで、7人もの女性を新たに採用したのです。それ自体が素晴らしいことですが、あくまでも、採用は第1フェーズです。できれば、私たちはその一歩先にある「女性たちが管理職になって活躍する」というところまで達してほしいと思っていましたが、由利さんはそれを見事にクリアされました。工夫されたことは2つ。まずは人事制度を改革したことです。男性であれ女性であれ、成果がきちんと評価されるように評価制度を作り直されました。さらに、管理職の業務内容を明確にしました。女性社員が管理職になる意思を持っていても、管理職としての仕事が具体的に分からないので手をあげないケースもありますから、その業務内容を社員の誰もが知ることは大切です。結果、由利さんに初めての女性管理職が誕生しました。ワークイノベーション研修会で、ゲスト講師でジャーナリストの浜田敬子さんが『(女性は)自己肯定感の低さゆえに、管理職を打診されてもなかなかOKしない人が多い。断られても3回は打診してください』というお話をされたのですが、由利さんはこの言葉を信じて、管理職候補の女性に打診し続け、まさに3回目で引き受けてもらったそうです。
昨年2020年、豊岡市は“女性活躍”の成果をあげている企業を、「あんしんカンパニー」として表彰する制度を立ち上げた。表彰される企業は、「従業員が働きやすい職場だと評価している」などの項目について、全従業員のうち、男性も女性も3分の2以上の賛意を得ることや専門家(社会保険労務士、税理士など)のヒアリングによる厳正な審査で決定づけられている。
小安 初年度は1社が表彰されましたが、毎年、ワークイノベーションの取り組みが進めば、表彰企業が増えていくと思います。いま、多くの企業が人手不足に悩んでいますが、優れた企業には働きたい人が集まるはずです。働きやすさと働きがいのある職場環境を企業間で競い合っていくことも、地方の企業が人手不足を解消するための手段になるでしょう。