しかしながら公道では、弱点が気になることも確かです。純正サスペンションやKWコイルオーバーキットを装備したこの「S2000」ですが、「ボクスター」や「Z3 Mロードスター」と比べ、はるかに硬い足回りなのです。卓越したバランスと滑らかな走行性能は姿を隠し、コーナーリングでは腰砕けとなってしまいます。

「S2000」の限界性能の高さは、他のライバルをはるかに凌駕するもの…。ですが、それを見せつけるためには、かなりの勇気が求められることになります。「S2000」の最大トルクは7500rpmにならないと発揮されず、シフトレバーから手を放す暇がありません。タコメーターの針が上がらないままではガッツが感じられず、遅く、面白味が伝わってきません。とは言え軌道に乗せさえすれば、3台のクルマの中で最も刺激的なものであることに疑いの余地はないのです。

そして、私たちがたどり着いた結論は?

 最後に、それぞれのクルマのパフォーマンスをまとめてみましょう。

 今回の「Z3 Mロードスター」に関して言えば、公道においても特別感がありました。どの程度の速度であっても淡々と仕事をこなすその姿には、たくましさと威厳が備わってさえいるようです。街中のストリートを流しても、その魅力は尽きることがありません。

 サーキットではややぼんやりした印象を受ける柔軟さが、公道では確実性と快適さとして示されます。十分な余力を持って走らせたときの「Z3 Mロードスター」は、まさにBMWが誇る最高のスポーツセダンに匹敵するドライビング・エクスペリエンスを感じさせてくれるものでした。

「この中では、“最高のスポーツカー”とは言い切れないかもしれませんが、『Z3 Mロードスター』が最も特殊な1台であることは間違いないと思います」と、ブラウン氏は胸を張ります。

 私が推した「ボクスター」ですが、柔らかめのセットアップがどんな路面でもスムーズに駆け抜け、サーキットでの安定した走行性能が一般道でも損なわれることはありませんでした。正確かつ滑らかで、他の2台と比べて大人しい印象の拭(ぬぐ)えない「ボクスター」ですが、問題点は皆無と言えるでしょう。強いて言えば、あまりにも上手くまとまり過ぎているために、個性を感じられない点にあるかもしれません。

 しかし、実際にクルマを走らせた今となっては、いかなる議論も不毛かもしれません。すでにどのクルマが勝者であるか、誰もが気づいていたのです。

 私たち3人が求めたのは、有無を言わさぬ特別な魅力を備えた1台でした。今回の3台の中でマツダ「ロードスター」の基準を上回ったのは1台だけ。自分の手元に置いておきたいと思えるほどの魅力を備えたクルマは、「S2000」という結論に至ったのです。

Text by Mack Hogan and Ryutaro Hayashi
Source / ROAD & TRACK
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。

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