自社製品そのものを送るのではなく、「自社製品を2割引きで買える権利」といったものを株主優待としている企業もある。これなどはむしろ、企業の利益を増やす要因になり得る。株主が権利を行使して製品を購入してくれれば、企業の売り上げは製品価格の8割分だけ増えるが、企業のコストは材料費しか増えないからである。

 企業が工場を建設して正社員を雇って製品を作っている場合、基本的には、製品を1個増産するためのコストは材料費だけと考えても差し支えない。増産してもしなくても、工場建設費用も正社員の給料も変わらないからだ。ちなみに、正社員の給料は固定費、材料費は変動費と呼ばれる。

 企業にとって、「自社製品の詰め合わせ」を株主優待とするのも得策だ。作ったものの売れ残りそうな自社製品を詰め合わせて送れば、在庫削減につながる。株主が製品価格を見て、得した気分になってくれればWin-Winになるのだ。

 株主優待がレストランチェーンの利用券であっても同様だ。顧客が1人増えても、企業のコストは材料費しか増えない。「2割引きだから友人と一緒に行こう」という客がいれば、友人が店のファンになってくれるという追加的な期待も持てよう。

 もっとも、製造業の場合は、工場がフル稼働していないタイミングを狙って優待品を作ることができるが、レストランの場合にはそれができない、という問題はあろう。

 極端な話、ランチタイムに株主が大挙して押しかければ、一般客が利用できないことになってしまう。そうした事態を避けるため、「株主優待はランチタイムには使えません」といった対応も選択肢であろう。