利回りの計算より気に入った優待品を

 優待狙いの投資をする際の注意点をもう一つ。株価に比べて優待品が豪華で、優待利回りを計算すると十分に魅力的だとしても、優待品が自分の好みに合わなければ、投資すべきではなかろう。

 優待品が高級なオレンジジュースだったとしても、本人がトマトジュースのほうが好きなのであれば、我慢してオレンジジュースを毎日飲む必要はないわけだ。その銘柄を売却して、自分の金で好きなトマトジュースを買って飲んだほうがその人の幸福度に寄与することになる。

優待廃止で株価暴落?

 株主優待狙いの投資に潜む思わぬリスクも認識しておきたい。それは、優待が突然廃止になるリスクである。

 上記のように、企業にとってはメリットが大きくコストが小さい株主優待であるが、機関投資家には不満があろう。機関投資家は「自社製品の詰め合わせ」をもらっても困るだろうから、彼らは「株主優待は個人投資家を不当に利する不公平なものであるから、廃止せよ」と言うことも十分あり得るのだ。

 近年では、そうした機関投資家からの圧力を受けて株主優待を廃止する企業が増えているという話も聞く。そうなると、優待が受けられなくなるのみならず、優待狙いで株を持っていた個人投資家の売りが殺到して、株価が暴落する、などという事態も決してないとはいえないのだ。

 会社の業況が悪化して優待を続けられなくなったのであれば、株価が下がるのは当然であって、通常の投資の失敗ということになる。しかし、会社がもうかっているのに株価が暴落したのでは目も当てられない。優待狙いの投資をする場合には、そうしたリスクも考えておく必要がありそうだ。

 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織などとは関係がない。また、当然であるが、投資は自己責任でお願いしたい。