テレビ番組「月曜から夜ふかし」などで人気の“優待おじさん”こと桐谷さん。都内を自転車で走り回り、株主優待でご飯やレジャー、買い物までする姿が有名だ。だが、そんな「株主優待命」の桐谷さんが、優待がない米国株投資をはじめた。米国株や米国経済の強さもさることがなら、“株主優待を上回る”米国株の魅力とは?
配当を年4回以上もらえる会社が多い!
私はもう70歳台。すでに株で数億円の資産を築きましたし、正直いって、もう大きく増やそうという気持ちはあまりないんですよね。株価の動きに一喜一憂せず、「株主優待をもらって楽しく過ごしたい」というのがホンネです。
私の具体的な銘柄選びの基準は「優待+配当」の合計利回りが4%以上あること。だから最初は、「優待がない米国株に合計利回り4%以上の銘柄があるの?」と思って消極的でした。
でも、米国では会社が得た利益を株主に還元する=株主還元に積極的。利益の還元とはズバリ「配当」です。その配当がなんと年々増えていく会社が多い。その主な理由は、米国は年率2%程度のインフレ(物価上昇)が続いていること。
人口が増え続け、長期的に経済が成長し、モノやサービスの値段が当たり前のように上がる米国では、株価の上昇や増配も当然のように捉えられているのです。配当もインフレ率と同程度に増やさないと実質目減りになり、増配しないと株主が納得しないといいます。デフレが続いていた日本とは真逆ですね。
また、年に1~2回配当の銘柄が多い日本株と比べて、年間の配当の回数が多い点も魅力の一つ。年4回配当の銘柄が多く、決算期が違う3銘柄を合わせれば、毎月配当を受け取ることもできます。なかには、1銘柄で毎月配当を受け取れる銘柄もあります。
総還元利回りは米国株の平均で4~5%も!
さらに、米国株では、株主還元の手法の一つである「自社株買い」も頻繁。会社が自社株買いを行うと、市場に出回る株式数が減り、1株利益の価値が相対的に上がります。たとえば1株利益が上がると、PER(※)は割安になりますよね。その結果、株価が上がりやすくなるのです。近年、米国では自社株買いを積極的に行う流れが加速しているといいます。
「配当」と「自社株買い」を合わせた総還元率は米国株平均で4~5%に達するということ。株主優待制度はありませんが、株主還元については、日本より積極的とも言えるのです。
株主を大切にする姿勢はいいですよね。「まずは高配当狙いで米国株を買ってみるのはありかもしれない」と思いました。特に今のように下がっている相場では、高配当株の買い場ですよね。
※PER(ぴー・いー・あーる)とは株価を1株あたり利益で割って算出し、株価が1株あたり利益の何倍かを示す指標(単位:倍)。数値が小さいほど割安、数値が大きいほど割高。
桐谷広人(きりたに・ひろと)
1949年10月15日、広島県竹原市生まれ。365日株主優待と配当で生計を立てる投資家。プロ棋士七段。バブル絶頂期の1984年に株を始め、バブル崩壊やITバブル、リーマンショックなど相場の浮き沈みを経験。資産は4億円目前。近著に『一番売れてる月刊マネー誌ザイと作った桐谷さんの米国株入門』『一番売れてる月刊マネー誌ザイと作った桐谷さんの株入門』の2冊が好評発売中。