手づくりで高品質な
「業務用ヒーター」で世界を目指す
世の中には「モノを温めたい」というニーズが意外に多い。身近なところでは、料理の保温や水道管の凍結防止が分かりやすいだろう。ニッチな分野では、工事現場で塗料や薬品などを缶ごと温めたいという要望がある。半導体製造などに不可欠な真空装置にもヒーターが必要だ。
神奈川県横浜市にあるメーカーのスリーハイは、こうした保温・加熱ニーズに応える法人向け「シリコンラバーヒーター」の専門企業だ。柔軟で耐熱性、耐寒性に優れたシリコーンを活用し、シリコーンゴムのシートに発熱線を組み込んだヒーターを用途に合わせて生産している。その9割は受注生産だ。
同社社長の男澤(おざわ)誠(52歳)は、その売れ筋について「食品、半導体、研究開発などの用途が多いです」と語る。
ヒーターの他、デジタル温度調節器や温度センサーも手がけており、コンパクトタイプの調節器「monoOne(モノワン)」はヒット商品になっている。
スリーハイは現在、国内での取引先が6800社に達している。顧客企業を特定の業界に依存せず、幅広い業界に広げてリスクを分散しているため、コロナ禍の2020年度も売上高は昨年度比で10%増と堅調だった。
だが、男澤はもっと先を見ている。まだ国外での販売実績は微々たるものだが、「生き延びるには海外進出しかない」と、18年から着々と海外展開の準備を進めてきた。
「今後、AIやIoT(モノのインターネット接続)が製造ラインに組み込まれて自動化が進むと、手作りのシリコンラバーヒーターに対する需要が減る危険性があります。もしかすると、加熱しなくて済むようなラインを設計可能になるかもしれません。国内だけを相手にしていてはリスクがあるので、世界に活路を見いだしたいと考えたわけです」と男澤は語る。