会見で浮き彫りになった
社外取締役の限界

 みずほFGは2014年6月、メガバンク3社としては初めて「委員会等設置会社」(15年会社法改正から「指名委員会等設置会社」)へ移行した。前年に発覚した暴力団などへの不正融資事件を受けたコーポレート・ガバナンス(企業統治)強化をうたったものだった。

 取締役会が経営を監督する一方、業務執行については執行役にゆだね、監視と執行を分離している。取締役会に監査、指名、報酬の三つの委員会を置き、各委員会のメンバーの過半数は社外取締役にしなければならない。人事や報酬の決定で外部視点を持つ社外取締役が強い権限を持つことになる。

 みずほはガバナンス強化の“優等生”であっただけに、会見での社外取締役への追及も厳しかった。

 矛先が向かったのは、取締役会議長でもある小林いずみ氏だった。

「金融庁からの行政処分での指摘について認識はどうか?」 「コスト構造改革を進めることで歪みが生じることをどう考え、議論してきたのか?」

 小林氏は、見ていて気の毒になるほど繰り返し「反省」を口にしながら、取締役会トップとして本問題への見解を初めて明らかにした。

 経営陣の人選については、「経営チーム全体として最強となるようなあり方について、十分な目配りをしていたかというと十分ではなかったと反省している」。ガバナンス全体については、「巨大グループとしての各業態子会社のガバナンスについて十分な目配りが出来ていたかというと、自分としてまだ十分でなかったという非常に強い反省を持っている」と認めた。

 会見の模様をネット中継したメディアは、日経新聞、NHKはじめ多数あり、社会的注目度の高さをうかがわせた。いわば衆人環視の下、社外取締役の限界があらわになったと言わざるを得ない。

 各社がコメントを引用している青山学院大の八田進二名誉教授は、産経新聞記事(1月18日付)で、「実務型の社外取締役が現場で声を吸い上げ、みずほの歴史的、制度的課題にメスを入れなければ組織は変わらない」と締めくくっている。

報道と向き合うことが
信頼回復の第一歩

 会見と社説でメディアから指摘されたことは、その背後にある世論の認識であると受け止めるべきだろう。そして、信頼回復はメディアを通じてしかできないのが冷厳な事実だ。

 現状のままでは、もはや何を語ってもメディアの理解は得られまい。 筆者の呼ぶところの“説明責任の迷路”( 詳しくは『三菱電機の相次ぐ「検査不正」、メディアが納得しない本当の理由とは』を参照)に陥っていると考える。

 状況打開の次のチャンスは、4月1日以降の新経営陣の着任会見となる。メディアを納得させる具体的な善後策を示せるかに、全てがかかっている。