経産省が発表した『電子商取引に関する市場調査』によると、中国の消費者が日本の越境ECサイト経由で商品を購入した金額は、2020年の1年間で約1兆9499億円。前年比では17.8%増を記録した。

「同じ調査では、世界の越境ECの市場規模は約89兆円になり、その規模は今後7年間で500兆円を超える見込みです。そしてこれからの越境EC市場をけん引するのは、インターネットの普及や経済成長が著しい東南アジアの国々といわれていますね」

 日本の越境EC市場は「コロナ禍を機にスイッチが入った」と、正代氏は話す。聞けば、この2年間で多くのメーカーや卸業者が越境ECをスタートさせているそう。

「当社で越境ECサイトを開設するユーザーの傾向ですが、この2年で中小規模の事業者が越境ECを始めるケースが増えていますね。コロナ禍の今、国内ECの競合が急増してしまい価格競争が激しくなり、なかなか利益が出にくい状況になっています。そのため、自社の国内ECを生かしつつ海外にもマーケットを広げたいという相談も多くなりました。なかには、中国向けECサイトをすでに運営して成功した企業が、別の国への“横展開”を始めるケースもあります」

 日本貿易振興機構が発表した「2020年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査報告書2021年2月」でも、46.7%の中小企業が「今後海外向けECサイトによる輸出を拡大する」と回答している。2018年の調査時よりも9.5ポイント増加しており、中小企業が越境ECに意欲的な姿勢がうかがえる。

「この調査では、大企業にも同じアンケートを取っているのですが、大企業の市場拡大意向は28.5%にとどまり、2018年に比べて1.4ポイント減少しています。おそらく大企業は、すでにリアル店舗を海外に出店していたり、海外店を拠点にECを展開していたりするケースもあるため、積極的に市場を拡大しない方針のようです。仮説ですが、大企業はコロナ禍で海外での実店舗運営の課題に直面し、その対応に追われて海外へのEC展開は“現状維持”を選択している印象ですね」