20秒でできる
声の健康チェック

 とはいえ、自分の声や声帯が老化しているかどうかを判断しようにも、なかなか自分では分かりづらい。人に聞いてもらおうにも、直接会話をする機会も減っているし、電話やビデオ通話では気づきにくい部分もあるだろう。自分一人でも、声や声帯の調子を確認できる方法はないのだろうか。

「あくまで目安ですが、『最長発声持続時間』を計測してみるとよいのではないでしょうか。小さい音量で構いませんので、『あーー』と一定の音量で声を長く出し続けてください。成人なら20~30秒ほど発声が持続できると、健康な声、健康な声帯の1つのバロメーターになります。

 声帯が衰えている人だと、5~6秒程度で息が続かなくなってしまうという。

「声帯は喉頭、いわゆる喉仏の奥についていて、観音開きの戸のように左右一対になっています。声帯は、呼吸をするときには開き、発声をするときには閉じる仕組みなのですが、声帯が老化すると閉じる力が弱まり、声のかすれや、発声のしづらさにつながるのです」

 発声時、声帯が適切に閉じられなくなる理由は数多い。声帯のハリの減少、声帯自体の萎縮、声帯結節やポリープといった炎症による腫れなど、さまざまだ。

「こうした要素によって、息が必要以上に漏れ出て息切れを起こしたり、声帯の正常な振動を妨げてかすれ声にしたりします。嚥下の際にも声帯が閉じますが、本来閉じているべき状況で隙間が生まれてしまっているために、誤嚥のリスクも上がるわけです」

 ほかにも、運動不足により肺活量が少なくなっている人も、最長発声持続時間は短くなる。対策としては、声を出すために必要な諸々の筋肉を衰えさせないことが肝心だ。

「特別な筋トレというより、日常のなかで『声を出す』という行為を意識的に行うだけでOKです。テレワークで仕事関係の人と話す機会が減っているのであれば、家族との会話の時間を増やしたり、知人に電話をかけてみたりするのもよいでしょう。また、近所迷惑にならない程度の音量で歌うことも効果的です」

 健康寿命を延ばすためにも、よくしゃべり、自身の「声」をよく聴く習慣を身に付けるとよいだろう。