そうして2年間の大学院生活を終えた小金澤氏。MBAを取得した現在は、以前とは見える世界がまるで違うという。

「何より、視野が広がりました。昔は、自社の経営層が発信するメッセージの本質や、経営方針がよく分からなかったのですが、納得感を持って受け取れるようになりました。その結果、現場と経営層の思考のギャップを埋める、橋渡し役もできるようになったんです。これは自分にとって大きな価値であり、財産ですね」

 また、求められる業務の内容が一気に変わり「自分の市場価値が上がっているのを感じる」と、小金澤氏は語る。実際、外部人材としては珍しく、顧客先で行っている「新規事業開発」に携わるなど、キャリアの幅が広がった。

「学び直しに対して“攻め”のイメージを持っている人は多いかもしれません。でもこれからは、私のように“守り”の気持ちで、学び直しをする人が増えるはず。私にとって学び直しは、自分の市場価値を維持するために、欠かせない手段になりました。なので、MBAを取って終わりではなく、今もウェビナーで新しい情報をインプットしたり、それを仕事にアウトプットしたり……学びに終わりはないですね」

 小金澤氏は「途中でやめるのも自由なので、気軽に始めてほしい」とアドバイスを送る。これからのビジネスパーソンには学び直しのみならず、“学び続ける”ことが、重要なのだろう。

宇田左近(うだ・さこん)
ビジネス・ブレークスルー大学副学長・経営学部長・教授

東京大学工学部卒業、同大学院修士課程修了、シカゴ大学経営大学院修了。日本鋼管(現JFE)を経て、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。現在は、さまざまな企業で役員を務めつつ、ビジネス・ブレークスルー大学で教べんを執る。