世界最大手ホテルチェーン
米マリオットもアセットライトを推進

 2021年5月に西武HDが発表した中期経営計画では、アセットライトをテーマに経営改革を断行すると明記された。その後、所有するホテルなどの売却先を探し始め、2月10日に売却先と内容の詳細を発表した。

 アセットライト経営とは、バランスシート上の資産(アセット)を圧縮して、財務面の負担を軽く(ライトに)する経営をいう。今回、西武HDは資産を投資ファンドに売却することで、事業運営の効率性向上が期待される。

 具体的には、保有資産の減少はコスト削減につながる。また、得られた資金を成長期待の高い分野に再配分することによって、資本の収益率は高まる可能性がある。売却資金を負債返済に充てる場合、財務内容は改善するだろう。

 事業運営の観点から考えると、新しいサービスの創出やホテルブランドの価値向上などに集中しやすくなる。その成果によって、投資ファンドなどホテルの所有者は利得を手にする。

 もし、期待する利得が実現できなければ、オーナーは別の企業に運営を任せようとするだろう。アセットライト経営によって、所有を前提としたビジネスモデルは大きく変わる。

 海外では、積極的にアセットライト経営を強化してきた企業がある。世界最大手のホテルチェーン、米マリオット・インターナショナルだ。同社はホテルの運営受託に特化し、低価格帯から高付加価値型まで多種多様なブランドを確立している。それは、より多くの需要を取り込むために欠かせない戦略だ。

 米国では金利が上昇し金融政策の大転換が近づいているが、マリオット株は上昇基調だ。それは主要投資家が、ウィズコロナ時代でもマリオットが人々の価値観の変容に柔軟に対応し、安定的に収益を生み出せると考えているからに他ならない。

 わが国ではモノを所有し、その利用権を独占することに意義を見いだす個人や企業が多い。しかし、そうした発想が、常に人々の満足度向上につながるとは限らない。ウィズコロナで事業運営の効率性を高めるために、アセットライト経営を目指す日本企業は増えるだろう。