施設の魅力を磨くだけでなく
潜在的な顧客の目を向けさせることが必要

 今後の注目点は、西武HDがいかに高付加価値型のサービスを創出できるかだ。20年に実施された国の支援策、Go Toトラベルキャンペーンの際、多くのシニアが自宅から近いエリアで旅行を楽しんだ。特に、首都圏からほど近い箱根や軽井沢などのリゾートが多くの人気を集めた。

 どんなに困難な状況下でも、私たちは「日常と異なる空間を楽しみたい」という欲求がある。国の家計調査によると、60歳を超える世代の貯蓄額は、他の世代を大きく上回る。シニア層のレジャーへの支出余地は大きい。

 ウィズコロナで、感染に留意しつつ自宅から1~2時間圏内で旅行を楽しむ「マイクロツーリズム」への潜在的な需要は増えるだろう。また、訪日外国人(インバウンド)需要は蒸発しているが、「コロナ禍が収束すれば日本を訪れたい」と考えている外国人は多い。そうした需要を取り込み、業績の回復と拡大につなげるためには、客単価の高い富裕層向けビジネスの強化も必要だ。

 西武HDは、国内外の需要を取り込む、新しい動線の確立に取り組むべきだ。そのためには施設の魅力を磨くだけでなく、潜在的な顧客の目を施設に向けさせることが必要だ。

 例えば、施設周辺の自然環境の美しさをコンテンツで創出し、それを拡張現実(AR)や仮想現実(VR)などの先端技術を駆使して、より鮮烈な体験につながる形で潜在顧客に伝える。他には、プライベートジェット運営会社との連携を強化し、より快適な移動体験を提供するのはどうだろうか。

 そうした取り組みが成果につながれば、新しいホテル運営会社がグループ外施設の運営を受託する展開もあるだろう。アセットライト経営の実践には、自社の経営資源に、社外の新しい発想を結合させる施策が必要だ。より効率的に付加価値を獲得することが、西武HDには求められている。