DXが経営のアジェンダとなりつつあるとはいえ、「何から始めたらいいのか分からない」「着手したものの具体的な成果は上がっていない」といった声を多く聞く。そもそもIT人材の絶対数が少ない地方の、しかも小売業となればなおさらだ。グッデイはなぜ変わることができたのか? 柳瀬さんや社員の皆さんへの取材を元に、グッデイ流・暗黒期の抜け出し方を3つの角度から見ていこう。

暗黒期に使用していた在庫管理システムとパソコン Photo by Mayumi Sakai暗黒期に使用していた在庫管理システムとパソコン Photo by Mayumi Sakai

 

「社員をヒーローにしたい」と語る経営者

 社員の得意を伸ばし、社内からヒーローを輩出していきたい。これが柳瀬さんのスタンスだ。取材で会うたびに、何かを極めようとする社員たちへの尊敬の念を口にしていた。

「器用貧乏」で「中の上のジェネラリスト」、柳瀬さんは自身をそう評価する。幼い頃から何をやってもスペシャリストにはなりきれない。いつしか特定の分野で突出した能力を発揮する人に強い憧れを抱くようになっていた。現場のスタッフは、園芸やDIYについて何でも知っていて、横で接客を聞いていても、ほとんど全ての質問によどみなく答えている。そんな姿を見て、「頑張っているのに数字がついてこない」、「煩わしい作業に忙殺されて本来の業務に集中できない」といった課題をITで解消してあげたいと思うようになったという。

「無人店舗のようなDXにしたくないのも根本は同じです。グッデイは現場の社員がいいんです。そこをちゃんと売り物にしないともったいない。グッデイが選ばれている一番の理由なんですから」(柳瀬さん)