グッデイを変えた、たった2つのITサービス

 グッデイが長い暗黒期から抜け出せたのは、2つのITサービスを使い始めたことがきっかけだった。一つは、2015年に導入したクラウド型グループウェア「Google Workspace」だ。システム部長の光嶋章さんは、「手の付けやすいところから始めた」と振り返る。

「仮に、発注システム、在庫管理システムといった小売りの基幹システムから手を入れようとすると、膨大な時間と莫大な資金が必要です。継ぎ足しを重ねた基幹システムの刷新ほどやっかいなものはないのに、成功しても組織全体に大きなインパクトを与えられるとは限らない。でも、Google WorkspaceならGoogleが提供してくれるありもののサービスを使うだけで、多くの社員が便利になったことを実感できます。かっこいい言い方をすれば、『費用対効果の高いところから着手した』ということになりますね」

 二つ目は、データ分析やデータのビジュアライズを可能にする「Tableau」だ。それ以前のグッデイは、大量のデータを保有していたものの、定型帳票以外のデータを入手するにはシステム部への依頼が必要で、手元に届くまで3~4週間を要していた。

 これがさまざまな問題を引き起こしていた。物事を定量的に把握できない、迅速かつ的確な意思決定ができないといった真っ当なものから、数字を都合よく解釈し、自分の施策であたかも成果が上がっているかのように説明する、といったことまでまかり通っていたのだ。

 柳瀬さんは、Tableauをコミュニケーションツールとしても捉えている。誰にとっても分かりやすく可視化されたデータを見て議論できるようになってからは、経験則や先入観、はたまた「偉い人がそうおっしゃるなら」といった忖度ではなく、データの裏付けを基に精度の高い施策が打てるようになった。自分たちの勘や思いつきに振り回されるという状況も払拭できたのだ。