SNSで人気を集めたイラストレーターの「トレパク」騒動

 まず、一つ目から説明したい。

 (1)ツイッターやインスタグラムで人気を集めていたイラストレーターにトレパク疑惑が持ち上がり、さらに「中の人」が暴かれて大炎上。

 これは今年1月後半から主にツイッター上で話題になっている騒動だ。ある人気アーティストグループのキービジュアルも担当していたイラストレーターに、「トレパク疑惑」が持ち上がった(「トレパク」については後述)。

 このイラストレーターは2017年頃からツイッターやインスタグラムにイラストを投稿し始め、現在までにツイッターでは約11万人、インスタグラムでは30万人近いフォロワーを持つ。短期間で人気を持つようになった理由の一つは、その作風が2010年代後半に流行した「エモい(エモーショナル/情緒的な雰囲気をまとうというような意味)」価値観とマッチしたからかもしれない。

 作品のほぼすべてが若い女性を描いたもので、本人も「女子しか描けない」ことをウリにしていた。

 さて、「トレパク」とは、「トレース」して「パクる」の意味で、もともとあった写真やイラストを敷き写しして、もともとの著作権者に断りなく構図やモチーフを盗むことだ。イラストレーターや漫画家がネット上で「トレパク」を指摘されることは、有名無名に限らず過去にも複数例があり、これをきっかけに有名漫画家が一時活動停止となったケースもある。

 単に写真集や作品集のポーズや構図を参考にすることと「トレース」との線引きが難しいという指摘もあるが、ネット上ではトレパクが疑われる枚数の量が、アウトかセーフかの一定の基準とされているようである。

 そのため、ひとたびトレパク疑惑が持ち上がると複数のウオッチャーたちが、そのイラストレーターの過去作品を検証し、似た写真やイラストがネット上にないかを探す。パクられた作品と思われるものが見つかると、2枚を並べて検証作業が行われる。一致度が高い(トレパクの可能性が高い)作品が見つかれば見つかるほど、そのイラストレーターの信頼は損なわれる。

 今回炎上したイラストレーターの場合も、騒動が拡大するに従い「トレパク疑惑」の枚数が積み重なった。イラストレーターは2月はじめにツイッターに「引用・オマージュ・再構築として制作した一部の作品を、権利者の許諾を得ずに投稿・販売してしまったことは事実です」と謝罪文を掲載したものの、「写真そのものをトレースしたことはございません」「模写についても盗用の意図はございません」と一部を否定したことから騒動は収まらず、当初静観していた様子だった取引先企業も、コラボ商品の返品対応を始めるなどの措置を取り始めた。