同社がローカル線の見直しに言及するのはこれが初めてではない。ちょうど1年前の2021年2月の社長会見でも「ローカル線の今後のあり方について課題提起をスピードアップし、関係の皆さま方と一緒になって、持続可能な地域交通を実現していきたい」と語っている。

 さらにさかのぼれば、2013年に策定した前中期経営計画の時点で「地域と課題を共有し最適な輸送モード等の検討を通じ、持続可能な地域交通のあるべき姿を追求」と記載されている。

 また2016年には「輸送モードとして鉄道が地域のニーズに合致して」おらず「『拠点間を大量に輸送する』という鉄道の特性を発揮できていない」という今回の「課題認識」と同様の理由で、島根県の江津駅と広島県の三次駅を結んでいた三江(さんこう)線の廃止を決定した。

 JR西日本の意図と目指す先は何か。ローカル線は廃止されていく運命にあるのか。JR西日本総合企画本部地域共生部の飯田稔督(としまさ)次長に話を聞いた。

輸送密度2000人未満を
見直しの基準にした理由

――今回、ローカル線の見直しに言及した背景は。

 首都圏のあるJR東日本、東海道新幹線のあるJR東海とは異なり、当社は本州三社の中では基盤が脆弱(ぜいじゃく)です。関西圏・岡山・広島の都市圏など利用者が集中的にいるところは競争力をもってやっていますが、利用の少ないローカル線をどうしていくか、発足当初からいろいろな経営努力、利用促進を積み重ねてきました。

 しかしJR発足から35年が経過し、北陸、中国エリアの人口は1割ぐらい減り、今後もどんどん減っていきます。高規格道路も整備が進み、地域のまちづくりも道路中心になって、ますます利用が少なくなっています。