JR九州が目指すローカル線でのドライバレス運転。システムが運転制御し、乗務員が車掌業務や非常時対応を担うものだ。技術開発も進み、今や自動列車運転装置による運行は、運転士によるものと大差ないという。人手不足が進む中、ローカル線生き残りの切り札の1つとなる可能性を秘めている。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
ローカル路線生き残りに
ドライバレス運転は有効か
JR九州は昨年12月23日、福岡市の近郊を走る香椎線西戸崎〜香椎駅間でATO(自動列車運転装置)の走行試験を開始した。2月中旬まで先頭車両に運転士が乗務した状態で走行試験を行い、ATOの運転制御や運転時分(各駅間の所要時間および停車時間)、乗り心地などを確認し、自動運転の実現に向けた技術検証を行うという。
ATOとは列車の加速、減速、停止の制御を自動で行うことができるシステムのこと。都市部の新交通システムや地下鉄では古くから導入されている技術だが、香椎線のようなローカル路線で導入されたケースはまだない。
今後、沿線人口はますます減少し、あわせて労働人口も減少が進むなかで鉄道ネットワークを維持するためには、効率的な鉄道運行は欠かすことのできない要素になる。かといって、効率的な鉄道運行を実現するために、莫大な投資が必要というのでは本末転倒だ。今ある設備を最大限に活用しつつ、どれだけ効率的な鉄道システムを構築できるかが、地方路線にとって生き残りのカギとなるのである。
そこでJR九州が目指すのが、ATO導入による地方路線でのドライバレス運転だ(ドライバレス運転と無人運転の違いについては「JR東『ワンマン運転拡大』に見る、鉄道乗務員レス化の未来」参照)。しかもこれを、新交通システムや地下鉄で導入実績のあるATC(自動列車制御装置)ベースのATOではなく、JR九州が導入済みのデジタル式ATS(自動列車停止装置)「ATS-DK」をベースに開発することで、格段に安価に自動運転の導入を実現するのだという。
技術的な解説は複雑になるので省くが、最新のデジタル式ATSは走行中、走行位置を正確に検知し、常時速度を監視するシステムを備えている。ATCとの機能上の差は少なくなっており、安全性には全く問題がない。
先行列車との距離や制限速度などの情報を、常時レールを介して車両に伝送するATCほどの緻密な制御はできないが、1時間あたり最大2~3本が運行される香椎線のような、運転本数の少ないローカル路線では必要十分な性能を確保できるとしている。技術的には大きな問題はなく、運転士経験もあるJR九州の広報担当者によれば、ATO運転は人間の運転と大差ないレベルまで仕上がっているそうだ。