国会の6割を共に民主党が占める中で
厳しい政権運営を迫られる尹錫悦氏

 尹錫悦氏の大統領就任は5月10日である。2カ月の政権引き継ぎ期間があるとはいえ、それまでに人事を固め、尹錫悦政権の主要政策を固めていく必要がある。しかし、韓国の国会は共に民主党の勢力が60%を占め、国内政治・経済で新機軸を打ち出すことは容易ではない。政権発足当初から弱体政権になりかねない。

 共に民主党との選挙戦は、お互いのスキャンダルに対する非難合戦、誹謗(ひぼう)中傷が支配的であり、後味の悪いものであった。それは当然、政治対立の深化という後遺症を残すことになる。共に民主党が占める国会とは最初から強い対決構造になるだろう。

 最初に直面するのは国務総理(首相)の人事であろう。閣僚の任命には国会での審議を行う必要があるが、国会の承認まで求めておらず、文在寅大統領は30人以上の閣僚を国会の承認なしに任命してきた。しかし、首相については国会の同意が必要であり、民主党との対立が深まった尹錫悦氏が任命しようとする国務総理について、共に民主党が容易に承認しない可能性がある。

 大統領選挙で候補者一本化に協力した安哲秀氏と国民の党との関係も課題である。過去には金大中氏が、金鍾泌氏と協力して大統領に当選した時に、金鍾泌氏を首相に任命した。仮に尹錫悦氏が安氏を首相に任命しようと考えても、共に民主党が安氏に裏切られたと感じているならば、任命に同意しない可能性がある。

 その場合、安哲秀氏と国民の党をどのように処遇するのかは難題である。安哲秀氏としては尹錫悦氏の次の大統領を狙うに資するポストを求めたいであろう。だが、国民の力には尹錫悦氏の次を狙う李俊錫(イ・ジュンソク)代表がおり、同氏との兼ね合いをどうするかは難しい判断である。

 政権発足時から対立の種を抱えると、それでなくとも弱い政権基盤が一層弱体化する可能性がある。