不安定な市場で投資家がコントロールすべきは
「投下資金」と「時間」の二つ

 さて、ではこのような局面で株式や投資信託への投資についてはどう考えればいいだろう。それは「基本」に立ち返ることだと思う。

 多くの人は誤解しているのだが、投資にはコントロールできるものとできないものがある。コントロールできないのは「リターン」、すなわち投資収益である。多くの人はこれを何とかコントロールしたいと思って努力する。年5%で運用したいとか、10%で運用目標を立てたりする。

 しかしながら目標を持つのは自由だが、それはコントロールすることは不可能だ。なぜなら投資というのは常に先行きが不確実なものだからだ。逆に言えばそれであるがゆえに、高いリターンが期待できるのである。今の状況で半年後や1年後の株価を予測してもあまり意味がないだろう。現時点では、まさに不確実性の真っただ中にいるのだから。

 では、コントロールできるものは何だろう? それはいくつかあるが、筆者が考える投資で成果を出すために大事な二つのコントロールできるもの、それは「投下資金」と「時間」だ。

 まずは、「投下資金」について考えてみよう。昨年、筆者は『となりの億り人』という本を執筆したが、その過程で投資に成功して資産を築いた人たちに取材を重ねた。ほぼ全ての人に共通するのは、無駄な支出を抑えて投資に回す金額を増やしたということだ。

 多少の運用利回りの違いよりも、投下金額を増やすことで圧倒的に差が出てくるのである。特に毎月積み立て投資をやって成功している人は、今回のような下落局面においては少し多めに資金を投入している場合が多い。もちろん、投資を始めたばかりの人はこういう下落局面に遭うと、なかなか勇気を持って資金を投入するのは難しいだろう。それでも何度か下落を経験しているうちに、下げた局面でより多くの資金を投入することの意味を理解し、実際に実行している。

 そして、投資のコストである手数料でも同じことが言える。つまり投資信託で「信託報酬」と呼ばれる手数料の多寡による差以上に、投下金額の差の方がはるかに大きいのだ。もちろん、手数料は安いに越したことはない。ただそれは「投下金額が同じであれば」という場合に言えることだ。投下金額が少なければ、どれほど安い手数料の商品を買ったところであまり影響はない。

 では、二つ目の「時間」はどうだろうか。これは投資期間のことを言っている。つまり長期のスタンスで投資を続けるのか、それとも短期売買で機敏に動かすのかは自分で決めることができるということだ。