長期と短期のどちらがよいのか?と言えば、これは一概には言えない。ただ、多くの人にとっては短期よりは長期の方が難しくはないだろう。なぜなら短期で収益を上げようと思うと、必然的にタイミングを見て売買する必要がある。下落局面で投資を急ぐことを戒めることわざに「落ちるナイフをつかむな」というのがあるが、今が落ちている真っ最中なのか、それとも地面まで落ちた後かを判断するのは難しい。短期売買で収益を得ようとすると、どうしても「勘」と「運」に頼らざるを得ない。

 ところが長期投資であれば、資産は自動的に増えていく可能性が高い。前回のコラムでもお話ししたように、資本主義は本質的に自己増殖していくシステムであり、長期的には複利効果が働くからだ。個別企業であれば倒産しない限り、あるいは投資信託であればグローバルに分散投資を続けることで、資産の増加を期待できるだろう。

 時間をコントロールするというのは、「自らの意思で投資を続けること」と言い換えてもよいだろう。すなわち、長期に投資を続けるというスタンスが大事なのだ。これに投下資金を少しずつ増やしていくことができれば、さらに安定感を増すことになる。

 日々の動きに神経をとがらせながら、コントロールできない“リターン”を追い求めるのではなく、自分でコントロールできる「投下資金の量」と「投資期間(=時間)」を増やしていくことこそが、昨今のように相場が揺れ動く時は大切であることを忘れてはならない。

(経済コラムニスト 大江英樹)