近年、世界で発生したイスラム教徒やユダヤ教徒、ヒスパニックなどを狙った極右テロは過激主義の影響を受けた一匹おおかみ的な事件で、上述の組織が計画的に大規模なテロを実行しているわけではなく、大きくネットワークを拡大しているわけではない。

 しかし、バイデン政権は昨年6月に策定した国内テロ対策の国家戦略の中で白人至上主義的なテロを強く警戒し、国連のグテーレス事務総長も同テロの脅威を強く指摘している。

 欧米各国もこういった過激な白人至上主義組織への警戒を強めている。

 カナダ政府は昨年2月、昨年1月の米国議会議事堂襲撃に関わった極右組織「プラウドボーイズ」をテロ組織に指定した。また米国政府も2020年4月、ロシアン・インペリアル・ムーブメントをテロ組織に指定した。この指定はアルカイダや「イスラム国」と同じもので、米国で初めてテロ組織に指定される白人至上主義組織となった。

ウクライナが長期的に不安定化すれば
世界的に極右テロが活発になる恐れ

 ロシアによるウクライナ侵攻により、ウクライナの長期的不安定は避けられない模様だが、ゼレンスキー大統領による呼び掛けに応じる形で外国人義勇兵の参戦が今後ますます進めば、国際的な極右テロが活発化する可能性も排除できないだろう。

 ウクライナの外国人義勇兵については、ナショナリズムや国防という視点で捉える人が大半だが、その中には白人至上主義など過激な極右主義の人々が関わっている可能性があることも認識すべきだろう。

 ウクライナは現在、外国人義勇兵のバックグラウンドや主義主張に配慮することなく、集められるだけ集めるというスタンスだ(差し迫った情勢なのでそうなるだろうが)。

 それゆえ、英国やオーストラリアなどから過激な極右主義に染まる自国民が義勇兵としてウクライナに渡り、そこで軍事訓練を積み、外国の極右主義メンバーとネットワークを形成し、帰国後に国内の治安悪化につながることに懸念を示している。ウクライナが第2のシリアにならないよう、テロ・過激主義の視点からもウクライナ情勢を注視していく必要がある。

(オオコシセキュリティコンサルタンツ アドバイザー/清和大学講師〈非常勤〉 和田大樹)