JFAの期末残高が2年で50億円減!
それでも「赤字を埋めるための売却ではない」

 さまざまな部署であらゆるコストカットを実践しても、収入減と赤字増が止まらない。そんな状況下でJFAハウスの売却が決まった。守秘義務もあって売却金額を非公表とした須原専務理事は「参考までに申し上げれば、100億円を超える売買契約となる」と語った上で、さらにこうつけ加えている。

「赤字を埋めるための売却ではないと、この場を借りて皆様にお伝えしたい」

 22年度予算が公表された昨年末の段階でも、須原専務理事は「赤字の多くは一過性のものであり、積立金で対応できる」と心配無用を強調していた。

 実際にJFAの「正味財産期末残高」を見ると、22年度予算では約177億2900万円が見込まれている。須原専務理事が「対応できる」と明言したのもうなずける。

 しかし、例えば20年度の「正味財産期末残高」は約225億6600万円だった。わずか2年間で50億円近く目減りした以上、事態は風雲急を告げてくる。

 支出に当たる経常費用内の事業費に「復興支援費」を計上してきたJFAは、20年度からは「サッカーファミリー復興支援事業費」と改めている。

 コロナ禍で資金難に陥る地域の街クラブやスクールが少なくない状況で、サッカー界のピラミッド全体を支える一番下の部分、グラスルーツ(草の根)を絶やすわけにはいかない。ただ、経営面で支援していくには、常にまとまった資金を用意しておく必要がある。

「公益財団法人であるわれわれ組織の責務として、与えられた資産をどのような形で社会へ還元させていくべきか、という視点に立って常に考えなければいけなかった」

 コロナ禍においてJFA内で交わされてきた議論を、須原専務理事はこう振り返る。その過程にあった昨年10月に、JFAは三井不動産と「サッカーの力を活用した街づくり連携および拠点再編に関する基本協定」を締結している。

 そして、検討項目のひとつとして「『JFAハウス』の有効活用」も設けられ、不動産売買に関して十分な経験と知見を持つ業界上位の信託銀行がコンサルタント役として加わったなかで、売却という選択肢が提案された。須原専務理事が続ける。

「プロフェッショナルである三井不動産やコンサルタントの方々といろいろな相談をさせていただき、いろいろな方向性を探ってきたなかで、与えられた選択肢の中では売却するのが最善なのではないか、という決定に至りました」