高円宮記念JFA夢フィールドへ機能移転
JFAが描く「今後の青写真」とは

 決定に至る議論には、ここでもコロナ禍に起因する前提条件があった。

 JFAでも、リモートワークや在宅勤務が促進された結果として、過去1年間における職員のJFAハウスにおける平均出勤率は19.5%にとどまった。

 最も高い月でも26.7%であり、JFAハウスの10階および11階を占めるオフィススペースの75~80%は活用されていない、いわゆるデッドスペースと化していた。

 9階に入居するJリーグをはじめとするテナントも同じ状況にあり、さらに経年劣化が進む施設で必須となる修繕費は、今後8年間で14億円以上に上ると試算された。

 20年に千葉市内に完成した、高円宮記念JFA夢フィールドの存在も見逃せない。例えば、ヴァイッド・ハリルホジッチ元監督はJFAハウス内に監督室を設けて、代表活動期間以外はほぼ常駐していた。しかし、今では年代別を含めて、ほぼ全ての代表チームの中枢機能が高円宮記念JFA夢フィールドへ移転している。

 一連の状況を前提とした議論を、須原専務理事は改めてこう振り返る。

「オフィスの使用率が著しく低くなっている状況についての課題意識、問題意識については、全く異論はなかった。その前提で、ならば次に何ができるのかを考えました」

 三井不動産レジデンシャルとの売買契約は近日中に締結され、その後は三井不動産が取り組んでいる、スポーツを中心とした再開発事業とも連携を図りながら、1年後をめどにJFAハウスから全てのオフィス機能を移転させる。

 新たなオフィスを構える場合でも原則として賃貸契約となり、一方でJFAハウスをリースバックするプランもない。須原専務理事は今後の青写真をこう描く。

「コロナ禍が収束してもコロナ前の働き方に完全に戻ることはなく、新しい働き方が推進されていくという前提の下で、高円宮記念JFA夢フィールドとも連携を図りながら、よりよい拠点を設定していきたいと考えています」

 職員の出勤率に合わせた面積の最適化やフリーアドレス制の導入、オンライン会議に適した共有オフィスや、通勤時間の削減のためのサテライトオフィスの設置などを念頭に置きながら、時代の変化に合わせて移転の機会を逆に活用していく方針のようだ。