東京労働局は3月、アクセンチュアの違法残業を立件した。コンサル業界で常態化する過重労働の異例の摘発に、業界には激震が走った。手掛けたのは、あの電通事件も強制捜査した労働局の特別部隊「過重労働撲滅特別対策班」(通称「かとく」)だ。およそ10回にわたり公開予定の特集『勝ち組に死角!コンサル大乱戦』の#7では、「かとく」のトップを直撃し、ターゲットの選び方などの捜査手法を聞くとともに、コンサル業界の「非常識」な働き方についても尋ねた。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
アクセンチュアが長時間労働で書類送検
「常習犯」のコンサル業界に激震
「違法な長時間労働を行わせた容疑で書類送検」
今年3月、あるプレスリリースがコンサルティング業界を震撼させた。冒頭のタイトルで東京労働局が報道関係者に配布したものだ。
書類送検されたのは、コンサル大手のアクセンチュアと同社のシニアマネージャーである「被疑者A」(57歳・男性)。“被疑者A”氏は、部下の労働時間を管理できる立場、つまり管理職だ。同氏は労働者1人に対し、1カ月に少なくとも143時間48分の時間外労働をさせていたという。
「これからは残業規制が厳しくなりそう」
コンサル業界関係者からはこんな指摘もある一方、「もっと残業している人もたくさんいるのでは」といった声も上がる。長時間労働の「常習犯」とされるコンサル業界人にとって、「143時間」という残業時間は決して珍しいものではない。他のコンサル会社も、いつ摘発されてもおかしくないのだ。
では、どんな企業が摘発の「ターゲット」にされるのか。今回ダイヤモンド編集部は、アクセンチュアにメスを入れた東京労働局・過重労働撲滅特別対策班(通称「かとく」)のトップを直撃し、組織の在り方や捜査手法を聞いた。
かとくとは、長時間労働の抑制を目的として、2015年に東京と大阪の労働局に設置された組織だ。かとくの主査を務める東京労働局労働基準部の中村祐樹監督課長(肩書は全て取材当時)によると、かとくは監督指導や捜査の経験が豊富なベテランの監督官を中心に構成されているという。
労働基準監督署(労基署)が捜査しているものの中で、過重労働に関する大規模な事案をかとくが引き継ぐこともあれば、かとくが独自に調査をすることもあるという。過重労働摘発のプロ集団だけあって、これまでも電通に代表される数々の「大規模事案」を摘発してきている。
かとくは、どのようにして対象企業を選ぶのか、どこをチェックするのか。次ページでは、かとくの「目の付けどころ」と「摘発手法」の詳細を明らかにする。
かとく主査の中村監督課長は、特定の業界にターゲットは絞らないと前置きしつつも、別のコンサルが摘発される可能性も示唆している。実際、次ページ以降で紹介するかとくの方針と手法を知れば、アクセンチュア以外のコンサルに、すぐにでもメスが入ってもおかしくないことが分かるだろう。
さらに、「長時間労働」や「残業代を付けない慣習」「強まる管理職への負荷」「リモートによる労働強化」など、コンサル社員への取材から上がってきた業界特有の問題の是非も、かとくに直接聞いた。
「最恐機関」の幹部は静かに、しかし強く、警告を発している。