不要?生き残る? ITベンダー&人材 大淘汰#5Photo:NurPhoto/gettyimages

過去6年で社員数を約3倍に増やすなど業界内で勢いが目立ち、大手SIer(システムインテグレーター)の脅威となっているアクセンチュア。なぜ強いのか?一方で肥大化を続ければ国内大手ベンダーの二の舞いにならないのか。特集『不要?生き残る? ITベンダー&人材 大淘汰』(全16回)の#5では、同社日本法人の土居高廣常務執行役員に、率直な疑問をぶつけてみた。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

まねできない「IT×コンサル」モデル
肥大化続けるリスクにどう答える?

 このところアクセンチュアに対して、大手ITベンダーの関係者の評価が急激に高まっている。米国企業である同社の日本法人では、6年で社員数が3倍の約1万8000人に急増。新卒生の就活人気ランキングでも常に上位を占める上、日系企業より高年収ということもあり、日系大手からシステムエンジニアなどの転職者も後を絶たない。

 あまり最近の事情を知らない人は「アクセンチュアってコンサル会社じゃないの?」と思うかもしれない。実際、同社は長らく上流の戦略から下流のオペレーションまで手掛ける総合系コンサルティングファームの「BIG4」(デロイトトーマツ、PwC、EY、KPMG)と並び立つ存在と目されてきた。ただしアクセンチュアはBIG4と比べ、コンサル活動関連のシステム開発を社内の開発部門が担うなど、以前からデジタル分野のITに強みを持つ特徴があった。

 そこへ昨今、顧客先である産業界にデジタルトランスフォーメーション(DX)の大波が押し寄せ、同社の「IT×コンサル」の両輪を駆使したビジネスモデルが競争優位性を発揮。ともすれば「ご用聞き」的な仕事に終始しがちな従来型SIer(システムインテグレーター)のコンサル機能強化が急務となる中、むしろ今やITベンダーにとってこそ脅威となりつつあるのだ。

 そんなアクセンチュアの日本法人は現在、上図の通り四つの本部体制で運用されている。そして、本部別に手掛けるサービスごとの専門組織と、顧客先グループとなる業界ごとの組織が連携。各組織にデジタル人材を配置し、戦略から開発、運用まで幅広い領域でサービスを強化し続けている。

 この中でも、DX案件における企画・開発などを手掛けるテクノロジーコンサルティング本部の統括本部長、土居高廣氏(常務執行役員)は「全ての領域で一番になりたいし、必ず一番のSIerになりたいとも思っている」と豪語する。この発言からも、総合コンサルから発展してきたアクセンチュアが大手SIerを意識していることは明白だろう。

 米アクセンチュアが9月23日に発表した2021年8月期の決算では、日本法人が2桁成長を達成したことも明らかとなった。

 急成長を遂げるアクセンチュアの強さの秘密を当事者としてどう捉えているのか。「IT×コンサル」部隊は具体的にはどう運用され、大手ITベンダーにも引けを取らないコスト競争力はどうやって確保されているのか。

 さらには、今後、どの職種、どのようなタイプの人材を採用し、どこまで人を増やすのか。肥大化してしまえば、将来的に国内大手SIerと同じ憂き目に遭わないのか?次ページ以降、疑問の数々に対する答えを土居氏に語ってもらった。