勝ち組に死角!コンサル大乱戦#3Photo:SOPA Images/gettyimages

デロイト トーマツ コンサルティング(DTC)の元役員による古巣の社員「引き抜き」を巡る訴訟で、東京地裁は元役員に損害賠償を命じた。転職が日常茶飯事のコンサル業界で、異例の法廷闘争が勃発したのはなぜか。およそ10回にわたり公開予定の特集『勝ち組に死角! コンサル大乱戦』の#3では、“泥仕合”の発端となったとみられるデロイトグループ内部のあつれきを実名でひもといていく。(ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)

コンサル業界に衝撃の「引き抜き禁止令」
4年前のデロイト社内の「事件」が発端?

「単なる勧誘行為にとどまらず、社会的相当性を逸脱した背信的な引き抜き行為」

 デロイト トーマツ コンサルティング(DTC)が、EYストラテジー・アンド・コンサルティングに移籍した國分俊史・元業務執行役員に社員を引き抜かれたとして、約1億1500万円の損害賠償を求めた訴訟。東京地裁は2月、厳しい表現で不法行為を認定し、元役員に約5000万円の支払いを命じた。

「引き抜き禁止令」にすら映る驚きの一審判決に、コンサルティング業界の関係者の間には衝撃が広がった。「引き抜きはよくあるので信じられない」。大手コンサル社員らの多くはそう口をそろえる。

 驚きは判決だけではない。デロイトの内部事情を知らない多くの業界関係者からは、「そもそもなぜ訴訟が起こされたのか」と、疑問が上がる。というのも、ビッグ4の中でもコンサル部門が強いデロイトが、いわば「格下」のEYとわざわざ事を構える格好となったからだ。「EYに対する弱いものいじめでは」(ビッグ4のOB)との声すら上がった。

 今回、引き抜き行為が法廷闘争にまで至った経緯には不可解な点が少なくない。だが、実は、事情に詳しいデロイト関係者らは「グループ内のあつれき」を遠因として指摘する。

 もっと具体的に言えば、ポストやビジネスを巡る幹部同士での確執である。それは、次第にエスカレートし、激しい暗闘の末にたどり着いたのが法廷の場だったというのだ。

 次ページからは、その発火点ともいえる4年前のある出来事を当事者自身の過去の発言などを基に、実名でひもとく。コンサルビジネスにおける局地戦はおろか、国家同士の安全保障の問題までも持ち出した、「血みどろ」の抗争の実態も明らかにする。