コンサル大乱戦#10Photo:123RF

巨大商社の間で、数奇な運命をたどるコンサルティング会社がある。シグマクシスだ。2008年に三菱商事の子会社として発足したが、その10年後に資本関係を解消。今、連携を深めるのは、三菱商事のライバル商社である伊藤忠商事である。その経緯をたどれば、コンサル業界に進出した二大商社の戦略の違いが浮かび上がる。特集『勝ち組に死角!コンサル大乱戦』の#10で、その舞台裏を明かす。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)

三菱商事から伊藤忠にパートナー変更
独立系シグマクシスの異色過ぎる商社遍歴

 2018年は、三菱商事と伊藤忠商事の双方にとって、今に続くコンサルティング戦略の分岐点だったのかもしれない。

 その年、三菱商事はシグマクシスとの資本提携を解消した。

 シグマクシスは08年、三菱商事が51%、米投資会社RHJインターナショナルが49%を出資して発足した合弁会社だった。その設立目的はICT(情報通信技術)を活用した企業の経営支援。要するに今で言う、DX(デジタルトランスフォーメーション)コンサル事業だ。

 13年には東京証券取引所マザーズ市場に上場するなど事業は拡大したが、草創期の成長を支えたのは無論、三菱商事グループだ。「三菱商事の案件で安定的に売り上げを確保でき、人材などの投資を積極的に行えた」とシグマクシス幹部も認める。

 だが、三菱商事は18年にシグマクシスの全保有株式を売却する。シグマクシス設立時に三菱商事社長だった小島順彦氏が10年に退任した後、三菱商事社内でDXコンサルの方針に変更があったもようだ。

 本特集#2『三菱商事・NTT連合がDXコンサルで最強アクセンチュアに挑戦状、3000人リストラの富士通は脱落』で明らかにした通り、三菱商事は今、日本電信電話(NTT)との合弁でインダストリー・ワンというコンサル会社を立ち上げ、再びDXコンサルに傾注している。

 その後、21年にシグマクシスの大株主になったのが伊藤忠商事だ。

 商社業界で三菱商事と首位争いを繰り広げる伊藤忠が、いわば“旧敵方”のコンサルに触手を伸ばした狙いとは何か。そこには伊藤忠が水面下で進めていた、ある極秘プロジェクトの存在があった――。