日本女子プロゴルフツアーは、男子ツアーの賞金総額を上回るほど人気絶頂の真っただ中にある。その人気に水を差しかねないのが、日本女子プロゴルフ協会が改革に踏み切った放映権問題だ。特集『最強のゴルフ ビジネス・人脈に効く!』(全12回)の#5では、放映権問題に反発するテレビ局やスポンサーの思惑を探った。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
しぶこ復活Vは地上波なし
ファンは「塩対応」と不満
2021年10月、静岡県の東名カントリークラブで開かれた日本女子プロゴルフツアー「スタンレーレディスゴルフトーナメント」の最終日。19年の全英女子オープンを制し、国内ツアー通算4勝を挙げて一気にスターに昇り詰めた「しぶこ」こと渋野日向子選手は、5位から追い上げて4人によるプレーオフに臨んだ。渋野選手は1年11カ月ぶりの優勝が懸かっていた。
プレーオフ2ホール目の18番ホール(パー5)、渋野選手は残り98ヤードの3打目をピンそばに付けた。しっかりとバーディーパットを沈めて劇的な逆転優勝を遂げた。久々の優勝に渋野選手は涙が止まらず、顔を覆った。
ところが、である。「しぶこ復活優勝」歓喜の瞬間は、お茶の間には届けられなかった。このときのスタンレーレディスは、地上波によるテレビ中継が行われなかったからである。日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)が、この大会から本格的にインターネットで有料配信を開始したためだ。
この大会は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、無観客試合だった。ある女子プロゴルフファンは「無観客試合なのに配信は有料放送だけ。どんだけ塩対応なんだよ」とがっかりしていた。
タレント性の高い選手がそろう女子ツアーは、今や男子ツアーの賞金総額を上回り、人気絶頂にある。
しかし、その人気に水を差しかねないのが、JLPGAが改革に踏み切った「放映権問題」だ。
次ページからは、放映権を巡る歴史的経緯や、JLPGAの改革に反発するテレビ局、撤退を検討するスポンサーの思惑について詳報する。