そして、上海人の「共助精神」も、ロックダウンの最中で最大限に発揮されたようだ。自宅のエリアが封鎖されてしまい外出できない人に、まだ封鎖されていない地域の友人や同僚などが食材を自家用車で届けているエピソードや動画などが投稿されており、とても感動的だった。筆者の友人の一人は、自宅に同僚から肉や野菜、牛乳などの食料品を届けてもらった。「本当にありがたい、こういう時こそ真の友人だ」と話す。

 医療資源が少なくなっていることが問題となる中、上海でも規模が大きい3100世帯、7800人ほどの住民がいる「小区」では、住民の医者たちが、自発的に医療チームを結成した。内科、婦人科、小児科の医師たちである。彼らは、住民の健康管理を行い、急病人の対応や高齢者の不安を取り除くなどの活動を始めている。チームのリーダーは、「家族や地域を守るためには、自分たちの力しかない」と語っている。

 また、SNSでは、陽性者が隔離される施設の設備や食事などが十分に整っていないことが拡散されている。このため、無症状であれば陽性になっても自宅で療養したいという要望が続出。ある小区では住民が、「在宅隔離」の嘆願書と提案書をSNSで公開した。

「無症状や軽症の住民については、われわれ住民同士で責任を持って力を合わせて苦境を乗り超える。国には限られている医療リソースを救命活動に使ってほしい。そのために、在宅隔離・療養を許すことを切にお願いしたい。これまで通りのコロナ政策はコストが高すぎて、二次、三次災害を起こすリスクが高い。その政策を抜け出して、新たな対策に転換していただきたい」――。このような声が政府に受け入れられることはなかったようだが、それでも上海市民の間では大きな話題となった。

若者がボランティアで活躍
希薄になっていた隣人との協力も

 筆者の知人で60代の福祉専門家は、自宅にあるコミュニティーで住民同士、自発的に食材を寄付し合う活動を始めたという。余った食材が他人の助けになれば、と話す。今、上海の市民の間で盛んに行われている共助活動について、彼は以下のように説明した。

「われわれの世代は昔の集落、いわゆる顔見知り社会で過ごした。それは行き来したり、助け合ったりする良き時代だったとも言える。しかし、経済発展に伴い地域が再開発され、地縁社会は崩壊した。上海は高層マンションが林立し、隣人が誰か分からず、人間関係は希薄になった。総じて都会人は冷たいと言われている。

 ところが、このロックダウンのお陰で、マンション単位やコミュニティー単位などで、情報を共有するためにSNS上でグループチャットを作るなど、いろいろなつながりができた。こんなに近くに住んでいるのに初対面の人も少なくなかったが、住民同士で助け合うようになってから一気に距離が縮んで、絆が強くなったように思う。これはとても良いことだ」